AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)はエネルギー恒常性維持の中心的キナーゼである。最近、我々はCKDではAMPKのAMP感受性低下のため、エネルギー不全(AMP/ATP比上昇)でもAMPKが活性化できずにエネルギー状態が改善せず、CKD増悪の悪循環を来すことを報告した。しかし、AMPKのAMP感知の生理的制御とCKDにおける破綻の分子機構は不明であった。「AMP感知の生理的な制御機構が存在するのか?」、「存在するならばCKDでどのように破綻しているか?」について知る必要があり、我々はその解明を目指した。今回、我々はULK1によるAMPKγリン酸化を介したAMPKγのAMP結合制御とそのCKDにおける破綻を発見した。ULK1はAMPKgサブユニットと結合しており、CKDマウス腎臓ではULK1発現が低下し、ULK1-/-マウス腎臓ではCKD同様、AMPKのAMP感受性の低下を認めた。さらに、ULK1によるAMPKγ1 リン酸化がAMPKγ1とAMPとの結合を増強し、AMPKを活性化する事を発見した。立体構造解析では、このリン酸化部位はAMPKγのAMP結合部位を裏打ちしていた。事実、このリン酸化はCKD腎臓でも低下し、AMP感受性低下の原因と考えられた。また、ULK1-/-腎臓は野生型よりAMP/ATP比上昇を示し、AMP反応性の低下を認めた。ULK1ノックアウトマウスでのCKDモデルを作成すると、腎機能と線維化、エネルギー代謝が増悪していた。これらは、AMPKのAMP感受性の生理的制御機構の存在という未知の発見であると同時に、CKDでのエネルギー恒常性破綻の解明につながった。
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