研究課題/領域番号 |
19H03674
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
成田 一衛 新潟大学, 医歯学系, 教授 (20272817)
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研究分担者 |
後藤 眞 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (00463969)
若杉 三奈子 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任准教授 (10584782)
忰田 亮平 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (20737697)
葭原 明弘 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50201033)
新藏 礼子 東京大学, 定量生命科学研究所, 教授 (50362471)
山本 卓 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (70444156)
金子 佳賢 新潟大学, 医歯学系, 講師 (80444157)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 粘膜免疫 / リンパ球レパトワ解析 / IgA腎症 / 口蓋扁桃 / 糖鎖不全IgA / APRIL / 骨粗鬆症 / サルコペニア |
研究実績の概要 |
IgA腎症は腎糸球体にIgA分子の沈着と補体活性化を伴うメサンギウム増殖性糸球体腎炎である。世界で最も頻度が高く、末期腎不全の主要な原因である。IgA腎症患者の血中で糖鎖不全IgA1が上昇し、糸球体に沈着することが知られており、原因は遺伝背景と環境因子の複合的な要因が想定されている (J Am Soc Nephrol 2011)。IgA腎症は上気道感染に伴い尿所見が増悪することから、その環境要因として上気道粘膜細菌叢の関与が強く疑われ、腎糸球体に沈着するIgAは粘膜免疫異常に由来すると考えられている。以前から本症の感染病巣として口蓋扁桃が注目されており、IgA腎症患者に特異的な扁桃細菌群が複数報告されている。申請者らは扁桃細菌叢の組成を16S rRNA解析で検討し、IgA腎症患者と習慣性扁桃炎患者の間に有意な違いは見られないことを報告した (Nephrol Dial Transplant 2017)。本研究により、IgA腎症患者の扁桃組織ではB細胞活性化因子であるAPRILやBAFFの発現は有意に増加し、特定の細菌叢 (Bacteroidetes門) へのIgA反応性が亢進し、末梢血ではこれらの細菌群に結合する多量体IgAが多く存在することを明らかにした(Nephrol Dial Transplant 2021)。したがって、IgA腎症患者では扁桃での粘膜免疫反応が異常亢進した結果、粘膜IgAが末梢血へ移行していることを示した。現在はT細胞レパトワ解析、single cell RNA-seqを行う準備を進めている。 一方臨床研究では、透析患者においては血清Brain-derived neurotrophic factor(BNF)レベルがサルコペニアと有意に相関することを示した また、尿毒症性骨粗鬆症に対してアンジオテンシン受容体拮抗薬が有効であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
腎性老化現象について多面的に研究を進め、それぞれ明らかな成果を挙げた。IgA腎症患者の口蓋扁桃の細菌叢の網羅的解析とBリンパ球レパトワ解析とを組み合わせた研究は、今までに報告がなく、本疾患の病態理解に大きな進展をもたらした。サルコペニアについては透析患者のおいて血中BNFレベルとの関連を初めて報告した。また骨粗鬆症が尿毒症性物質により促進される病態において、レニン-アンジオテンシン系が重要であることを示すことが出来た。 以上の成果は直接相互の関連性は薄いが、いずれも腎性老化現象の重要な表現型であり、それぞれの病態に総合的に対応する治療、介入が必要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの研究結果と収集した生体試料を活用し、さらにT細胞レパトワ解析、single cell RNA-seq解析を行うことで病態の解明と新たな治療法の開発を進める。1細胞解析を通じてIgA腎症の扁桃に特異的な免疫細胞群を同定し、免疫応答から生じるIgA分子の特性と末梢血および腎糸球体への動態を解明することにより口蓋扁桃の免疫応答異常の詳細な機序を解明することを目指す。サルコペニアと骨折については、以前からデータをとり続けてきた魚沼や佐渡の疫学コホートを使いさらに大きな症例数で検討を進めるとともに、これらと認知機能との関連に関しても解析を行う。
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