研究課題
腎うっ血は直血管や尿細管周囲毛細血管のうっ滞による血管内圧上昇と腎髄質血流の低下による低酸素による周皮細胞(ペリサイト)-筋線維芽細胞転換により腎線維化が進行するという仮説を検証するため、①ラットうっ血モデルを用いた、慢性腎うっ血の生理学的機序の解明、②ペリサイトライブイメージングによる細胞内酸化ストレス発生機序の解明、③腎うっ血における筋線維芽細胞を介した腎間質線維化の証明、④ノックアウトマウスおよびsiRNA投与による腎うっ血モデルの作製のそれぞれのテーマを開始した。ラットうっ血モデルを用いた動物実験では、マイクロスフェアとマイクロCTで認められていた直細血管の拡張が、卓上型低真空走査型電子顕微鏡(LVSEM)を用いた解析においても確認された。ペリサイトライブイメージングでは、マイクロダイセクション法により腎臓から直血管を単離し、培養を開始した。ラットうっ血モデルに血小板由来成長因子受容体(PDGFR)阻害剤であるイマチニブの投与したところ、うっ血腎の重量低下が確認されたが、LVSEMではペリサイトの脱落はそのままであった。一方、組織学的には特に直細血管周囲で腎障害、線維化マーカーの上昇がイマチニブの投与により抑制されていた。分子生物学的分析では髄質外層で線維化、間葉系、ペリサイト-筋線維芽細胞転換(PMT)関連マーカーの発現がイマチニブ投与により抑制されていた。以上により、腎内血管のうっ血拡張によりペリサイトが脱落し、PDGFRを介してPMTが起きることが明らかになった。また、PDGFRのうっ血に対する機能を確認するため、iGONAD法によるPDGFRBノックアウトマウス作製を開始した。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、腎うっ血に伴う腎内分子メカニズムと治療戦略を解明するため、①ラットうっ血モデルを用いた、慢性腎うっ血の生理学的機序の解明、②ペリサイトライブイメージングによる細胞内酸化ストレス発生機序の解明、③腎うっ血における筋線維芽細胞を介した腎間質線維化の証明、④ノックアウトマウスおよびsiRNA投与による腎うっ血モデルの作成を行うことを計画している。研究実績概要に記載した通り、それぞれのテーマについて概ね当初の計画通り実験が進展している。
本研究計画は順調に推移しており、次年度もこのまま研究計画に従い本研究課題を遂行する。現時点では研究計画の変更はなく、研究を遂行する上での問題点も見当たらない。
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Hypertension
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