研究課題/領域番号 |
19H03681
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
豊島 文子 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (40397576)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 皮膚 / 幹細胞 / 組織リモデリング / 妊娠 |
研究実績の概要 |
皮膚は、体型変化に伴い表面積を変化させるが、それを担う表皮幹細胞の制御機構は不明である。我々は、急速に拡張する妊娠マウスの腹部皮膚において、表皮幹細胞を由来とするTbx3陽性の基底細胞細胞群を同定し、この細胞群が表皮基底細胞の増殖と皮膚の拡張を促すことを示した。本年度では、Tbx3+細胞による表皮基底細胞の増殖機構について解析した。 表皮基底細胞の増殖とTbx3+基底細胞の相関を解析するため、H2BGFPの蛍光希釈により細胞分裂回数をモニタリングできるマウスを検討した結果、Tbx3+基底細胞の近傍に分裂回数の多い細胞集団がクラスターとなって存在する様子が観察され、epidermal proliferation cluster (EPC)と名付けた。EPCの形成機構を探るため、非妊娠、妊娠、Tbx3cKO妊娠マウスの腹部表皮基底細胞のRNZseq解析を行った結果、Tbx3によって制御される妊娠期の遺伝子として113遺伝子を同定した。この遺伝子群のネットワーク解析の結果、MAPKの関連が予測された。pERKを観察したところ、妊娠期に基底細胞でpERKが上昇しTbx3cKOマウスでは低下することが観察された。そこで、113遺伝子の中の一つであるADAM8に着目した。ADAM8は、HB-EGFを切断し、近傍の細胞にEGF-EGFR-ERKシグナルを活性化することが知られている。ADAM8は妊娠期において、Tbx3+基底細胞の周辺の細胞で発現上昇すること、ADAM8 KOマウスではERK活性化と細胞増殖が抑制されることが分かった。さらに、HB-EGF cKOマウスにおいても増殖が低下した。これらの結果から、Tbx3+基底細胞は周囲の細胞にADAM8の発現を誘導し、EGF-EGFR-ERKシグナルを活性化することでEPCを形成することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
妊娠期における表皮基底細胞の増殖制御機構は、本研究課題の最も大きなテーマの一つである。本年度では、そのメカニズムを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1)Tbx3陽性細胞の細胞運命の解明:Tbx3陽性細胞をラベルトレースできるマウスを用いて、妊娠・出産後の細胞運命を解明する。1細胞解析を合わせることにより、トランスクリプトームレベルで細胞運命を明らかにする。 2)真皮の役割の解明:Tbx3陽性細胞を出現を促す真皮の要因を探る。1細胞解析により、妊娠期に変動する細胞集団を特定し、その細胞集団の役割を解明する。 3)胎児発生におけるTbx3陽性細胞の役割の検証:Tbx3 cKOマウスにおける胎児サイズの低下について、分泌因子との関連を中心に解析する。
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