研究課題
本研究の目的は、天疱瘡の原因となるデスモグレイン(Dsg)に対する特異的なB細胞を患者から単離・クローニングすることにより、自己抗体の構造・自己反応性B細胞の特徴の検討を通じて天疱瘡の病態を解明し、より疾患特異的な治療法の開発につなげることである。これまでに、蛍光抗体で標識した組み換えDsg蛋白を用いることで、天疱瘡患者の末梢血からDsg特異的B細胞を単離する方法を確立し、シングルセルRNAシーケンスの技術を用いて、その遺伝子発現解析を行ってきた。具体的には、慶應義塾大学病院に通院する天疱瘡患者の末梢血から単核球(PBMC)を分離し、フローサイトメトリーで記憶B細胞の分画からDsg特異的B細胞を単離した。また、コントロールとして非特異的B細胞も同一患者から単離した。単離したそれぞれのB細胞からcDNAを増幅し、Nextera XT DNA Library prep kit (illumina)を用いてライブラリーを作成し、Novaseq6000 (illumina)でシーケンス解析を行った。本研究では、3例の天疱瘡患者から92のDsg特異的B細胞と115の非特異的B細胞のRNAシーケンスデータを得た。検出された10518遺伝子のうち、253が発現変動遺伝子(DEGs)であった。B細胞受容体のサブクラスではIgG1が最も多く、6種類のサブクローンが同定された。リンパ球の機能に関連するDEGに着目すると、BATFやCD9などのB細胞の分化に関連する遺伝子、S100A8/A9やCCL3といった炎症に関連する遺伝子の発現に有意差が見られた。本研究で行われた単一細胞解析により、天疱瘡患者体内のDsg特異的B細胞の特徴に関する情報が得られた。今後、より多くの天疱瘡症例の重症度や臨床経過を反映するかを検証し、新しい検査系や治療法の開発への応用が期待される。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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