研究課題
1.再生不良性貧血(aplastic anemia: AA)患者の骨髄において、抗原特異的に優勢に増殖しているT細胞レセプター(T-cell receptor: TCR)αβ鎖のうち、2種類のTCR(TCR15、TCR20)のT細胞トランスフェクタントは、CD80/CD137Lを導入したHLA-B4002陽性K562細胞に選択的に反応することを見出した。これらのTCRのリガンドを同定するため、K562由来のcDNAライブラリーをトランスフェクトしたHLA-B*40:02・CD80・CD137導入COS細胞または293T細胞と共培養することにより、TCR15およびTCR20が反応するcDNAクローンを、インターフェロンγ分泌を指標とするELISAにより同定を試みている。現時点ではリガンドの同定に至っていない。また、HLA-B4002陽性K562細胞において、HLAクラスI分子に結合するペプチドを質量分析によりスクリーニングした。その結果、複数のペプチドを同定した。このペプチドをパルスしたHLA-B4002陽性293T/COS7細胞にTCRトランスフェクタントが反応性を示すか否かを検討している。2.AA患者の異なるHLA-Aアレル、Bアレルに共通してみられるexon 1領域のナンセンス変異を同定し、この変異を高感度で検出できるdroplet digital PCRを開発した。このアッセイを用いてexon 1の共通変異を同定することにより、日本人AA患者において自己抗原をT細胞に提示するアレルは4種類のHLA-Aアレルと、8種類のHLA-Bアレルに限られていることを明らかにした。3.HLAアレル欠失血球を有する寛解状態のAA患者を対象として、HLA欠失および非欠失末梢血造血幹前駆細胞(HSPC)のそれぞれの分画についてRNAシーケンシングを安定して行う方法を確立した。
2: おおむね順調に進展している
昨年度は、K562細胞由来のcDNAを数万個スクリーニングしているが、今のところTCR15およびTCR20が反応するクローンは同定できていない。その他のプロジェクトは予定通りに進んでいる。
1.TCR15とTCR20を用いたK562 cDNAライブラリーのスクリーニングを引き続き行い、これらTCRトランスフェクタントのリガンドを同定する。2.HLA-B*40:02導入K562細胞のB4002に結合しているペプチドが、TCRトランスフェクタントおよび患者末梢血CD8陽性細胞によって認識されるかどうかをELISAでスクリーニングする。3.複数の患者を対象として、HLA欠失HSPCと HLA非欠失(野生型)HSPCにおけるRNA発現を比較することにより、異なるHLAクラスIアレルが提示するAAの自己抗原や、HLA非欠失HSPCがT細胞からの攻撃を回避するメカニズムを明らかにする。
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Leukemia
巻: 33 ページ: 2732-2737
10.1038/s41375-019-0510-0