研究課題
1.CD80/CD137Lを導入したHLA-B4002陽性K562細胞において、HLAクラスI分子に結合するペプチドを質量分析によりスクリーニングしたところ、HLA-B4002と親和性の高い複数のペプチドが同定された。その中の一つは、造血幹細胞の増殖を調節する転写因子X由来のペプチドであった。HLA-B*40:02陽性再生不良性貧血(aplastic anemia: AA)患者の骨髄において、抗原特異的に優勢に増殖している2種類のT細胞レセプター(T-cell receptor: TCR)αβ鎖(TCR15、TCR20)のT細胞トランスフェクタントは、CD80/CD137L導入HLA-B4002陽性K562細胞に選択的に反応してインターフェロン(IFN)-γを分泌したが、CRISPR-Cas9でこの蛋白XをノックアウトしたK562細胞に対してはIFN-γを分泌しなかった。このため、この蛋白X由来ペプチドが、TCR15・TCR20のリガンドであると考えられた。そこで、精製HLA-B4002とこのペプチドを用いてテトラマーを作製した。2.良好な造血能を維持するために少量のシクロスポリンを必要とするシクロスポリン依存性AA患者のうち、HLA-DR15を有する患者の末梢血造血幹前駆細胞(HSPC)では、HLA-DRがepigenetic に欠失していることを新に見出した。さらに、このDR欠失HSPCとDR非欠失HSPCの間でRNA発現を比較したところ、DR欠失HSPCでは、CD48やCD80などの共刺激分子の発現も低下していることが明らかになった。興味深いことにこのDR欠失は、GPIアンカー膜蛋白が欠失したPNH型のHSPCでは観察されなかった。
2: おおむね順調に進展している
目的とするTCRトランスフェクタントの有力なリガンド候補が同定された。また、HLA-DR15という特定のHLAクラスIIアレル発現が、ヒトHSPCにおいて選択的に起こっていることが初めて証明された。これらはいずれも、再生不良性貧血の自己抗原同定に迫る重要な知見と考えている。
1.HLA-B*40:02陽性AA患者の骨髄で抗原特異的に増殖しているTCR15、TCR20を利用することにより同定したリガ ンド候補X蛋白が、実際のAAの発症に関与しているか否かを明らかにするため、HLA- B4002テトラマーを用いてX蛋白特異的なT細胞の頻度を明らかにする。3.テトラマー陽性T細胞のHSPCに対する細胞傷害性を、HLA-B*40:02陽性iPS細胞由来のHSPCを用いて明らかにする。4.HLA-DR15欠失HSPCを有するシクロスポリン依存性AA患者において、HLA-DR15拘束性にHSPCを認識するCD4陽性T細胞を同定する。
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Haematologica
巻: in press ページ: -
10.3324/haematol.2020.247809
Leukemia
10.1038/s41375-021-01202-8