研究実績の概要 |
本研究課題では、従来の白血病幹細胞研究に新規高感度メタボローム解析を組みこむことでヒト急性白血病(AML,ALL)に共通する幹細胞性維持機構解明に取り組む。申請者はヒトCD34+AML,ALL細胞およびCD34+正常造血幹前駆細胞の代謝産物測定系の樹立をすでに行っており、ヒト急性白血病(AML,ALL)に共通する代謝特性として分岐鎖アミノ酸(BCAA)代謝経路の恒常的活性化が生じていることを見出している。PDXモデルを用いた先行研究のデータからは、マウス食餌中BCAA制限のみで、ヒトAML,ALLのin vivoにおける幹細胞性維持機構が強力に低下することを見出している。その分子メカニズムについても、ESやiPS細胞等の種々の幹細胞において未分化性維持に必須のエピジェネティクス制御因子であるPRC2の機能をBCAA代謝が直接制御している可能性を見出している。本研究課題では、これらのデータを基盤としてより詳細な解析を行い、BCAA代謝がヒト急性白血病の幹細胞性維持を制御する分子メカニズム解明に取り組み、AML,ALLに共通する新規治療標的導出のための基盤となる研究になることを目的とする。令和2年度は、ヒト白血病検体を用いたメタボロームデータベースの拡充を行い、BCAA代謝に加えて新規の白血病特異的な代謝特性の探索に取り組んだ。その結果、BCAAに加えてミトコンドリアにおいてヒトAML特異的に活性が亢進する異なる新規の代謝経路を2つ同定し、その代謝経路に関与する治療標的分子群を同定することに成功した。さらにこれらの2つの酵素阻害によるPDXモデルを用いた抗白血病効果についても証明を完了した。
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