申請者は準備実験において、① 抗癌剤である5-fluorouracil (5-FU) 投与後3 日目から12 日目まで造血幹細胞の分裂が誘導されていること、② 3日~7日目(前期)までは主に造血幹細胞数のみが上昇すること、③ 8 日目以降(後期)の造血幹細胞分裂は幹細胞数の増加(自己複製分裂)だけでなく、前駆細胞の供給(分化分裂)にも寄与していること、を確認していたため、分裂誘導時に幹細胞性維持に寄与するエネルギー代謝制御の特徴を明らかにするため、5-FU 投与後の前期、又は後期のマウスに、CFSE色素ラベルした造血幹細胞を移植し、分裂を誘導したところ、前期では主に幹細胞が、後期では幹細胞と前駆細胞が産生されることを見出した。さらに、その時、前期の分裂ではミトコンドリアの活性が高い一方で、後期では逆に著しく低い活性を見出している。このことから、造血幹細胞の自己複製はミトコンドリア代謝によって、分化分裂はミトコンドリアに依存しない代謝(細胞質内代謝)によって誘導されている可能性を見出した。
|