研究課題/領域番号 |
19H03698
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
児玉 裕三 神戸大学, 医学研究科, 教授 (80378687)
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研究分担者 |
増田 充弘 神戸大学, 医学研究科, 助教 (60512530)
塩川 雅広 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (50737880)
妹尾 浩 京都大学, 医学研究科, 教授 (90335266)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | IgG4関連疾患 / 自己抗原 / 自己抗体 |
研究実績の概要 |
IgG4関連疾患は、血清IgG4高値に加え、IgG4陽性の形質細胞浸潤による全身臓器の腫大と線維化を同時性・異時性にきたす、我が国で確立された新しい疾患概念である。その病態には自己免疫の関与が示唆されてきたが、未だ原因不明であり、2014年には我が国の指定難病に指定された。最近申請者らは、IgG4関連疾患の膵病変である自己免疫性膵炎において、その病因自己抗原がラミニン511であることを世界に先駆けて発見した。本研究では、IgG4関連疾患の各臓器病変における自己抗原を同定し、同疾患の全体像の病態解明と、自己抗体測定による診断法の確立、さらには病因に基づく新規治療開発を目指している。
1) IgG4関連疾患の各臓器病変における新規自己抗原の同定 :まず、IgG4関連疾患の包括診断基準を満たす様々な臓器病変をもつ症例において、抗ラミニン511自己抗体の有無を検討した。 これまでに、IgG4関連下垂体炎や、IgG4関連涙腺・唾液腺炎の症例について検討を進めているが、これらの症例には抗ラミニン511自己抗体は認めていない。次に、自己免疫性膵炎症例において新規自己抗体の探索を行ったところ、ラミニン511と結合するインテグリンファミリー分子に対する自己抗体の存在が示唆された。
2) マウスモデルを用いたIgG4関連疾患の病態解明 :申請者らはこれまでに、患者IgGをマウスへ投与することによる自己抗体の存在の証明法を確立している。上記で集積したIgG4関連下垂体炎や、IgG4関連涙腺・唾液腺炎症例のIgGをマウスへの投与することにより、自己抗体の有無について検討を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、IgG4関連疾患の膵病変である自己免疫性膵炎において、その病因自己抗原がラミニン511であるという申請者らの発見に引き続き、IgG4関連疾患の各臓器病変における自己抗原を同定し、同疾患の全体像の病態解明と、自己抗体測定による診断法の確立、さらには病因に基づく新規治療開発を目指すものである。一方、IgG4関連疾患の各臓器病変は、下垂体、涙腺・唾液線、眼窩、副鼻腔、肺、心血管、肝胆膵、消化管、腎、後腹膜、前立腺など、ほぼ全身の臓器に発症する可能性があり、その担当診療科は非常に多岐にわたる。このように、多施設による共同研究が診療科横断的となることにより、当初の想定に反し、臨床情報および血清検体の集積に難渋した。しかし、研究遂行上、各臓器領域のIgG4関連疾患症例の血清検体が不可欠なため、症例集積期間を延長して実施した。
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今後の研究の推進方策 |
1) IgG4関連疾患の各臓器病変における新規自己抗原の同定 :IgG4関連疾患の包括診断基準を満たす様々な臓器病変をもつ症例をさらに集積する。IgG4関連疾患患者、およびコントロールの血清を用い、各種のラミニンアイソフォーム蛋白質、あるいはこれらのプロセシング 蛋白質、さらにはラミニンと結合するインテグリンファミリー蛋白質を用いたELISA法により、これらの蛋白質に対する自己抗体の有無について検討する。
2) マウスモデルを用いたIgG4関連疾患の病態解明 :これまでに集積した各種の臓器病変をもつIgG4関連疾患症例のIgGをマウスへの投与することにより、自己 抗体の有無についての検討を継続する。また申請者らは、ヒトrecombinantラミニン511をマウスへ免疫すると、同マウスに抗ラミニン511抗体が産生 され、自己免疫性膵炎の診断基準を満たす膵病変が誘導されることを示した(Sci Transl Med. 2018;10:453)。本研究でも同マウスモデルを用い、新規の自己抗原候補による組織障害・炎症誘導・線維化について検討を行う。
3)自己抗体測定によるIgG4関連疾患の新規診断法の確立 :IgG4関連疾患は、臓器腫大・高IgG4血症・組織所見によって診断されるが、その特徴である高IgG4血症も診断における特異度は約70%と決して高くなく、国際的に通じる新たな診断法の確立が求められている。これまでの検討では、抗ラミニン511自 己抗体は、感度51%、特異度98%で あった。今回得られた新規自己抗原候補についても、ELISA法による自己抗体の測定法を確立する。
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