研究課題/領域番号 |
19H03699
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
松本 満 徳島大学, 先端酵素学研究所(次世代), 教授 (60221595)
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研究分担者 |
西嶋 仁 徳島大学, 先端酵素学研究所(次世代), 助教 (60425410)
森本 純子 徳島大学, 先端酵素学研究所(次世代), 助教 (20451396)
松本 穣 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (30836250)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自己免疫疾患 / AIRE / I型糖尿病 / 遺伝子改変マウス |
研究実績の概要 |
AIRE欠損症は比較的稀な自己免疫疾患であるが、AIREという単一遺伝子の異常による自己免疫病態を示すため、疾患モデルマウスを作製して病気のメカニズムを研究できるメリットがある。今年度はAIREの標的遺伝子を同定するための遺伝子改変マウスを樹立するとともに、Transcriptome解析やSingle-cell analysisといった最先端の方法論を導入し、AIRE機能の解明に取り組んだ。すなわち、P2Aリンカーを用いて内在性のAIRE遺伝子座にマウスAire cDNAを2コピー付加したノックインマウスを作製した(以下、3xAire-KIと略す)。まず、Real-time PCR法によって胸腺髄質上皮細胞(mTEC)からのmouse Aireの発現レベルをヘテロ3xAire-KIとホモ3xAire-KIについて測定したところ、ヘテロ3xAire-KIでは野生型の2倍、ホモ3xAire-KIにおいては野生型の3倍と期待通りのAire mRNAの発現を認めた。FACSを用いたAIRE蛋白質の検討によっても、ヘテロ3xAire-KIとホモ3xAire-KIは遺伝子発現レベルに応じてAIRE発現mTECの増加を認めた。さらに、1細胞当たりのAIRE蛋白質を測定したところ、遺伝子発現レベルに依存してMFI値の上昇を認め、計画通りに野生型マウスに付加的にAIREを発現する遺伝子改変マウスを樹立することが出来た。一方、MHC class II promoter下にヒトAIRE cDNAを配置した導入遺伝子を構築して作製したAIRE-Tg(NOD)においては、高いAIRE発現レベルを示した独立した2ラインでI型糖尿病の発症が完全に阻止された。この糖尿病抵抗性のメカニズムについては、骨髄移植実験等により、Xcr1陽性DCが減少したことによるものであることを突き止めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した、P2Aリンカーを用いて胸腺髄質上皮細胞(mTEC)においてAIRE蛋白を過剰に発現するノックインマウスの作出に成功した。特に重要な点は、本ノックインマウスにおいては内在性のマウスAireプロモーターを用いてマウスAireの発現を誘導した点であり、本研究課題において解析するもう一方の遺伝子改変マウスAIRE-Tg(NOD)がMHC class II promoterを使用し、かつ発現させたAIRE蛋白がヒトAIREであることと大きく異なる。これらの異なる2種類の遺伝子改変マウスを用いることで、AIREがmTEC特異的に発現することの生理的意義やAIREの異所性発現による病理学的変化の検証といった多くの課題に取り組むことが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
自己寛容の成立機構におけるAIREの役割については、AIREがmTECからの自己抗原の発現を転写レベルでコントロールし、負の選択やTregの産生に寄与するというモデルが優勢であるが、私どもはAIREがそれ以外のメカニズムによって自己寛容の成立を制御するモデルを提唱し、その妥当性を検証する。そのため、mTECで発現する転写調節因子であるAIREの標的遺伝子の同定に取り組む。一方、AIRE-Tg(NOD)の糖尿病抵抗性獲得機構の解明については、1)AIRE-Tgと対照マウスからDCを採取し、RNA-seq法によりtranscriptomeの差異を明らかにする。2)I型糖尿病抵抗性を示すAIRE-Tgの抗原提示細胞からのインスリンペプチド/MHC複合体の提示能をインスリン反応性T-cell hybridomaを用いて検討する。3)AIRE-Tg由来のmTECとDCを用いて、MHC class I/class IIに結合する自己抗原ペプチドを高感度Mass spectrometerを用いて網羅的に解析し(Peptidome解析)、I型糖尿病の発症に関わる自己抗原ペプチドを明らかにする。以上のように、AIREを基軸として、自己免疫病態の解明と新たな治療法の開発に大きく資するよう本課題を取り進める。
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