研究課題/領域番号 |
19H03706
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
今井 淳太 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (80431500)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膵β細胞 / 迷走神経 / インスリン / 肥満症 |
研究実績の概要 |
研究課題「ヒト膵β細胞増量治療開発に向けた肝臓―膵β細胞間神経ネットワークの分子機構の解明」はこの神経ネットワークにおいて複数の迷走神経因子が協調して膵β細胞FoxM1経路を活性化する細胞内メカニズムを解明し、肥満時に肝臓ERK経路活性化が起こるメカニズムを解明することを目的としたものである。 膵β細胞においてAchはGq蛋白共役型受容体であるムスカリン3受容体を介して、またPACAP、VIPはいずれもGs蛋白共役型受容体であるPAC1受容体、VPAC2受容体を介してインスリン分泌を促進することが知られている。このことから、この神経ネットワークにおいてはこれらの迷走神経因子が協調して作用することによってGsシグナルとGqシグナルを同時に活性化することが膵β細増殖につながっていると考えられる。そこで、これらのシグナルが細胞内でどのように協調してFoxM1経路活性化につながるのかを明らかにするため、Ach, PACAP, VIPを作用させた単離膵島においてどのような細胞内経路が変化しているかを解析した。その結果FoxM1の発現上昇に関与する転写因子の発現が上昇していることが明らかになった。 一方、腸管特異的CCL2 ノックアウトマウスでは高脂肪食による腸管炎症が著明に抑制されることから、このマウスを用いて肝臓ERK 活性化における腸管炎症の関与の検討を進めている。現在腸管上皮特異的CCL2ノックアウトマウスを作製し、高脂肪食負荷による影響の検討を進めている。また、腸管に炎症を惹起することで肝臓ERK経路が著明に活性化するモデルの作成にも成功したことからこのマウスと腸管上皮特異的CCL2ノックアウトマウスの膵β細胞における表現型を比較しつつ検討を進めることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
迷走神経因子を作用させた膵島細胞においてFoxM1の発現上昇に関与する転写因子の発現が上昇していることを明らかにできたこと、腸管上皮特異的CCL2ノックアウトマウスの作製が完了したことから、研究は概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
迷走神経因子を作用させた膵島細胞においてFoxM1の発現上昇に関与する転写因子の発現が上昇していることを明らかにできたことから、現在、膵β細胞特異的なこの転写因子のノックアウトマウスを作製するためにfloxマウスの作製を進めている。これにより、迷走神経因子によるFoxM1経路活性化、肥満時の膵β細胞増殖における、この転写因子の役割を検討する。 また、作製が完了した腸管上皮特異的CCL2ノックアウトマウスを用いて、高脂肪食を負荷した際の、肝臓ERK経路の活性化や膵β細胞増殖、膵β細胞におけるFoxM1経路の活性化などについて検討を進める。また、腸管に炎症を惹起することで肝臓ERK経路が著明に活性化するモデルの作成にも成功したことからこのマウスと腸管上皮特異的CCL2ノックアウトマウスの膵β細胞における表現型を比較しつつ検討を進める予定である。
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