研究課題
インスリン抵抗性は糖尿病を始めとした、様々な代謝疾患の基盤となる病態である。本研究ではインスリン抵抗性の発症機構と病態の理解を目指し、脂肪脂肪のインスリンシグナル障害が他臓器に及ぼす影響について解析した。前年度までの解析で、PDK1/Foxo1経路を介した脂肪細胞での炎症性脂質メディエーターであるLTB4の産生がインスリン抵抗性や代謝疾患の発症に重要な役割を果たすことが明らかとなったため、脂肪細胞特異的にLTB4の産生に関わるタンパクを過剰に発現するマウスを作成し、その表現型を解析した。具体的には、脂肪細胞特異的にLTB4産生の律速酵素である5LOとその活性化タンパクでるFLAPを過剰発現するマウス及びLTB4産生の最終酵素であるLTA4Hを過剰発現するマウスを作成した。脂肪細胞特異的LTA4H過剰発現マウスも、脂肪細胞特異的5LO/FLAP過剰発現マウスも血糖や体重、インスリン値を始めとした代謝表現型は野生型マウスと比べ差はなかった。一方、脂肪細胞特異的LTA4H過剰発現マウスを高脂肪食で飼育すると、野生型マウスと比べて脂肪組織の増大はより大きく、個々の脂肪細胞のサイズが大きくなっているものの、炎症関連遺伝子の発現は低く、成熟脂肪細胞を特徴付ける遺伝子の発現は高いことが明らかとなった。また、野生型マウスと比べてインスリン感受性は良好であり、肝臓の脂肪蓄積野生型マウスに比べ抑制されており、いわゆる「脂肪細胞の健康的増大」の表現型を示すことが明らかとなった。今後、LTA4Hの発現増加を促すような薬剤を同定できれば、新しいインスリン抵抗性改善剤の開発に繋がる可能性があると考えられた。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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J Diabetes Investig
巻: 12 ページ: 1144-1151
10.1111/jdi.13511
https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2020_05_05_01.html