研究課題
サーチュインはNAD依存性の脱アセチル化酵素である。哺乳類ではSIRT1-7の7種類のサーチュインが存在するが、SIRT7の代謝作用については不明な点が多い。本年度は、SIRT7の白色脂肪細胞におけるSIRT7の役割について検討を行った。PPARg2は脂質代謝の中心的な役割を担う転写因子である。免疫沈降法およびプルダウン法で検討したところ、SIRT7とPPARg2が結合することが判明した。SIRT7ノックアウト(KO)マウスの白色脂肪組織ではPPARg2のアセチル化が亢進していたこと、293T培養細胞にSIRT7とPPARg2を共発現させたところPPARg2のアセチル化が減弱したことから、SIRT7はPPARg2の脱アセチル化作用を有していると考えられた。SIRT7とPPARg2の結合領域について検索した後、同部位に存在するリシン残基をアルギニン残基に変換したPPARg2変異体を作製し、SIRT7の脱アセチル化効果について検討したところ、SIRT7はPPARg2の382番目のリシン残基を脱アセチル化することが明らかになった。C3H10T1/2細胞にレトロウイルスを用いて野生型PPARg2、PPARg2のK382R変異体(脱アセチル化状態をミミック)およびK382Q変異体(アセチル化状態をミミック)を感染後、脂肪細胞に分化させたところ、野生型PPARg2とK382R-PPARg2発現脂肪細胞は細胞内に脂質蓄積が認められたのに対し、K382Q-PPARg2発現脂肪細胞ではほとんど脂質の蓄積が認められなかった。SIRT7はPPARg2を脱アセチル化することで脂肪細胞の資質蓄積を制御していることが判明した(JDI 2021 in press)。
2: おおむね順調に進展している
今年度までの研究の結果、SIRT7は低分子量Gタンパク質であるRanを脱アセチル化することで炎症のマスターレギュレーターであるNF-kB p65の核外移行を抑制することで炎症促進的に作用することや、PPARg2を脱アセチル化することで脂肪合成促進的に作用することなどを解明することができた(BBA Mol Cell Res 2019, JDI in press)。研究計画は順調に進展していると考えられる。
今後は、褐色脂肪組織(BAT)や骨格筋におけるSIRT7の役割解明に焦点しながら研究を推進していく予定である。またSIRT7の活性を制御する薬剤のスクリーニングを行うために必要なSIRT7活性測定系の構築についても検討を進めていく。
すべて 2021 2020 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
Nature Metabolism
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https://www.kumamoto-medbiochem.com/