研究課題
近年、乳癌の転移・再発における腫瘍免疫微小環境の働きが注目されている。腫瘍免疫微小環境においては、癌を抑制する免疫細胞と、癌に対する免疫を抑制し癌の進展を促進する免疫細胞とが存在する。S1Pは腫瘍免疫微小環境において、癌細胞を制御するこれらの免疫細胞に影響を及ぼしている可能性が示唆され、本研究で追究する。申請者は、「乳癌患者の腫瘍免疫微小環境において脂質メディエーター・スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)が重要な役割を担っている」と仮説を立て、本研究を企画した。本研究の目的は、腫瘍免疫微小環境におけるS1Pの役割を解明し、その臨床的意義を明らかにして治療応用のための研究基盤を築くことである。本研究課題では、SphK1KO細胞をSphK1KOマウスに移植する実験を行い、腫瘍微小環境におけるS1Pの重要性が示唆された。手術検体の免疫組織化学によってリン酸化SphK1の発現を評価し、腫瘍関連免疫細胞について評価した。腫瘍におけるS1Pが高濃度の乳癌では、pSphK1の発現が高く、CD4やCD8などのT細胞やCD68やCD163などの単球系のマーカーの発現が高まっており、S1Pと腫瘍免疫との関連が示唆された。乳癌患者血漿検体のリピドミクス解析では、乳癌患者の血漿中S1P濃度が乳癌の進行度やホルモン感受性と関連することを見出した。トランスクリプトームデータのバイオインフォマティクス解析の結果、SphK1を高発現している乳癌では、CD4やCD8などの抗腫瘍免疫に関わるT細胞マーカーや、CD68やCD163をはじめとした腫瘍関連マクロファージのマーカーが高値を示した。さらにTNFやIL-6、TGF-βなどの腫瘍免疫に関わるサイトカインの発現が高値を示し、PD-1やPD-L1、CTLA4の発現も有意に高く、S1P産生の高い腫瘍では免疫逃避機構の働きも強くなっていることが示唆された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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International Journal of Molecular Sciences
巻: 22 ページ: 13367~13367
10.3390/ijms222413367
Am J Cancer Res
巻: 11 ページ: 3320-3334