研究課題
大腸癌は、日本において罹患率の高い癌であり、癌死患者総数も多く予後不良な疾患である。この為、大腸腫瘍の進化(特に発症のメカニズム)と免疫寛容獲得の機序を解明する事が求められている。我々は進行大腸癌のmulti-regional analysis (MRA)で、腫瘍内の全領域に共通して存在するfounder変異が存在し、そこに各ブロック固有の、いわゆるprogressor変異が存在してheterogeneityを形成することを明らかにした。また、前癌病変および早期大腸癌のMRAを行い、癌の早期の段階でサブクローンが排除され、強力なドライバー遺伝子の変異がfounder変異として選択されていくことを示し、癌の進化のモデルを示した。しかし、どちらの研究も腫瘍細胞のDNAの変化を解明しているが、間質の反応に関する視点が欠如していた。今回は、腫瘍細胞のDNA・RNAの変化と間質の変化(RNA)の相関関係を解明する事によって新たな治療標的分子を解明する事を目的としている。昨年度は、空間情報を有するシングルセル解析、進行大腸癌症例に対して spatial RNA sequencingを施行した。RNA seqデータのドライ解析によって、HE所見とRNAの発現データ両方から、正常上皮・腫瘍上皮を確認した。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していたシングルセル解析よりも、構造を保ったまま解析することが可能な解析法VOSIUMは条件設定が難しく、消化管での報告が令和3年4月の段階で存在しないが、われわれはこれに成功し、解析を進めることができているため。また、陥凹型がんに関しては全ゲノムシーケンスまで行うこととしており、構造異型をみることも可能である。様々な先鋭的なアッセイを行うことができており、順調に進んでいる。
研究では、進行がんの芽となる極めて初期の病変(ポリープ型(腫瘤型)、非ポリープ型(平坦型)、非ポリープ型(陥凹型))について、シングルセル全ゲノム解析(HM-SNS)および腫瘍免疫応答解析 (RNA Seq)を併施して発がんから進化への理解を深め分子治療の標的を求めることを目標としている。特に、陥凹型がんについては、論文報告を成し得たようにアームレベルのコピー数変異を大規模に来していることを明らかにした(Clin Transl Gastroenterol. 2020)。したがって、本年度陥凹型癌の更なる構造異型について明らかにすべく全ゲノムシーケンス解析による陥凹型大腸がんの進化解析と真のドライバー機構の解明を行う。①CNAまたは構造異型;Whole genome sequencing(WGS)よりSV, CNAを同定する。②RNA Seq併施して、微小環境も合わせて解析。免疫応答の破綻(寛容化)を癌側、宿主側で評価する。一方MSS進行癌では、spatial RNA sequencingを施行した結果、大腸癌細胞の広がり方・広がる際に変化していくpathwayを解析した。本年度は大腸癌検体の免疫染色を施行する事で、RNAレベルで確認した事を蛋白レベルでも確認していく予定である。さらに早期大腸癌(carcinoma in adenoma)に対して spatial RNA sequencingを施行する事によって、正常上皮がadenoma、cancerと変化していく中で、上皮細胞の広がり方、pathwayの変化を解析する。早期癌における上皮細胞の動態を解明すると共に発癌に必要なpathwayを抽出し、上記と同様に左記pathwayが活性化される理由を解明する。並行して、その際と絵画上昇するメカニズムをAIにて解明していく計画をしている。
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すべて 雑誌論文 (15件) (うち査読あり 15件、 オープンアクセス 14件) 学会発表 (35件)
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