研究課題
申請者らは、これまでに間質を伴う正常組織の人為的再構成法を基盤として、日本人膵癌患者より分離したプライマリ膵癌細胞を用いて、膵癌微小環境を再現可能なヒトプライマリ膵癌オルガノイド作製法の開発に成功した。ヒトプライマリ膵癌オルガノイドはin vitroおよびin vivoにおいて高い抗癌剤耐性を示すことから、本技術は膵癌患者で見られる高い治療抵抗性を再現するための手法を確立したといえる。本研究では、膵癌の進展に必須と考えられる膵癌細胞と間質の間におこる相互作用を、申請者らが開発したヒトプライマリ膵癌オルガノイドを用いた人為的な癌間質の操作とその特性解析等により明らかにし、膵癌制圧のための膵癌細胞-間質相互作用の制御を試みる。本年度はin vivoでの膵癌細胞-間質相互作用を明らかにすることを目的に空間的オミックス解析手法の導入に着手し、解析条件の決定を行った。さらに、in vivoの結果をin vitroで検証する為、組織検体取得と同時に臨床検体からのプライマリ細胞の樹立、発現検証手法の確立、およびプライマリ膵癌細胞に対するゲノム編集技術の確立を進めた。また、エクソーム解析についても解析の用意が出来ている。これらの結果、膵癌細胞-間質相互作用分子の同定と機能解析および、薬剤標的候補の抽出に向けた予備的検討が整った。
2: おおむね順調に進展している
膵癌細胞-間質相互作用分子の同定と機能解析および、薬剤標的候補の抽出に向けた予備的検討が整ったことから、おおむね順調に進展している。
in vitroおよびin vivoにおける空間的オミックス解析と1細胞レベルのオミックス解析を統合解析することにより、膵癌細胞-間質相互作用分子の抽出を実施する。抽出された分子については発現解析や予後相関とうの解析を進めると共に、人為的がん組織を用いた機能解析を実施する。機能解析において患者予後相関や治療抵抗性との関連がみられる分子については創薬標的としての有用性を評価し、候補標的分子については創薬へ向けた検討を行う。また、空間的オミックス解析においては前年度までに見出した、血管内皮細胞のヘテロジェネイティについて、このヘテロジェネイティの機能的意義についても検討を進める。さらに、癌微小環境における神経細胞の役割について培養条件の更なる検討など解析可能な条件検討を実施する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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