神経芽腫モデルマウスを用いたGD2抗体発現間葉系幹細胞による新規細胞免疫療法開発

2020 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 19H03719
• 研究機関: 京都府立医科大学
• 研究代表者: 田尻 達郎 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80304806)
• 研究分担者: 松田 修 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00271164) ; 岸田 綱郎 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00370205) ; 東 真弓 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10380453) ; 文野 誠久 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40405254)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2023-03-31
• キーワード: 癌 / 神経芽腫 / 間葉系幹細胞 / 免疫療法 / 抗GD2抗体

研究実績の概要

ハイリスク神経芽腫に対する新規治療法として，マウスモデルに対する間葉系幹細胞（MSC）によるhoming効果と，抗GD2抗体を用いた免疫療法を組み合わせたGD2-MSCsによる新規細胞免疫療法の開発を目的とする．将来的にはGMP準拠医薬品として製造し，医師主導治験を経てハイリスク神経芽腫に対する地固め療法としての臨床導入を目指す．
具体的には，神経芽腫の臨床試験で用いられている抗GD2抗体，IL-2，GM-CSFを組み込んだベクターをマウスMSCに導入させ，転移モデルを含む各種神経芽腫モデルマウスに対して腫瘍特異的に抗GD2抗体を作用させることにより,神経芽腫特異的抗腫瘍免疫を活性化させる予定であったが，導入する遺伝子が大きいことによる発現量の不安定性や細胞の変異の可能性を考慮し，マウスMSCには抗GD2抗体を発現する遺伝子とマーカーのみを組み込み，IL-2およびGM-CSFはGD2-MSCsと同時投与とする方針とした．導入するコンストラクトについては，検討を重ねた結果，一つのpromoterで抗GD2抗体（14.G2a）をGFPと同時に発現するplasmidをMSCに導入することで遺伝子発現を蛍光顕微鏡にて視覚的に確認することとした．
現在，レンチウイルスシステムによりマウスMSCに抗GD2抗体発現遺伝子を導入したGD2-MSCsの作成には成功している．また，in vitroにて抗GD2抗体の細胞外への分泌，およびGD2発現腫瘍細胞への分泌抗体の結合，ADCC活性を確認した．in vivo実験では実際のマウスモデルに対するHoming効果を確認しており，抗腫瘍効果を確認すべく投与実験を行っている．

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

現在使用しているマウスモデル（TH-MYCNマウス）に関しては，抗GD2抗体が生体内で効力を発揮できる正常免疫を持つモデルであること，腹腔内の腫瘍に対するHoming効果が確認できるモデルであるということから使用していたが，腫瘍の増殖スピードが非常に早いためにGD2-MSCs単独で抗腫瘍効果を確認することが困難であった．

今後の研究の推進方策

TH-MYCNマウスモデルより得た初代培養細胞を拡大培養し再度同種の免疫正常マウスの皮下に移植することで抗GD2抗体の抗腫瘍効果を確認しやすいモデルを作成する．
さらに腫瘍への局注によるGD2-MSCsの単独の抗腫瘍効果，臨床で使用されている抗がん剤との併用効果，及びMRDモデルを用いた実際的な臨床利用を想定した抗腫瘍効果実験を行っていく予定である．

研究成果

• [雑誌論文] Safe diagnostic management of malignant mediastinal tumors in the presence of respiratory distress: a 10-year experience (2020)
  • 著者名/発表者名: Tanaka Tomoko、Amano Hizuru、Tanaka Yujiro、Takahashi Yoshiyuki、Tajiri Tatsuro、Tainaka Takahisa、Shirota Chiyoe、Sumida Wataru、Yokota Kazuki、Makita Satoshi、Tani Yukiko、Hinoki Akinari、Uchida Hiroo
  • 雑誌名: BMC Pediatrics 巻: 20 ページ: 292
  • DOI: 10.1186/s12887-020-02183-w
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Outcome and Late Complications of Hepatoblastomas Treated Using the Japanese Study Group for Pediatric Liver Tumor 2 Protocol (2020)
  • 著者名/発表者名: Hiyama E, Hishiki T, Watanabe K, Ida K, Ueda Y, Kurihara S, Yano M, Hoshino K, Yokoi A, Takama Y, Nogami Y, Taguchi T, Mori M, Kihira K, Miyazaki O, Fuji H, Honda S, Iehara T, Kazama T, Fujimura J, Tanaka Y, Inoue T, Tajiri T, Kondo S, Oue T, Yoshimura K
  • 雑誌名: Journal of Clinical Oncology 巻: 38 ページ: 2488～2498
  • DOI: 10.1200/JCO.19.01067
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] A phase II JN-I-10 efficacy study of IDRF-based surgical decisions and stepwise treatment intensification for patients with intermediate-risk neuroblastoma: a study protocol (2020)
  • 著者名/発表者名: Iehara Tomoko、the Japan Children’s Cancer Group Neuroblastoma Committee、Yoneda Akihiro、Kikuta Atsushi、Muraji Toshihiro、Tokiwa Kazuaki、Takahashi Hideto、Teramukai Satoshi、Takimoto Tetsuya、Yagyu Shigeki、Hosoi Hajime、Tajiri Tatsuro
  • 雑誌名: BMC Pediatrics 巻: 20 ページ: 212
  • DOI: 10.1186/s12887-020-02061-5
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Novel Two MRT Cell Lines Established from Multiple Sites of a Synchronous MRT Patient (2020)
  • 著者名/発表者名: KUWAHARA YASUMICHI、IEHARA TOMOKO、ICHISE EISUKE、KATSUMI YOSHIKI、OUCHI KAZUTAKA、TSUCHIYA KUNIHIKO、MIYACHI MITSURU、KONISHI EIICHI、SASAJIMA HIROYASU、NAKAMURA SATOAKI、FUMINO SHIGEHISA、TAJIRI TATSURO、JOHANN PASCAL D.、FR?HWALD MICHAEL C.、YOSHIDA TATSUSHI、OKUDA TSUKASA、HOSOI HAJIME
  • 雑誌名: Anticancer Research 巻: 40 ページ: 6159～6170
  • DOI: 10.21873/anticanres.14636
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Correction to: Results of a phase II trial for high-risk neuroblastoma treatment protocol JN-H-07: a report from the Japan Childhood Cancer Group Neuroblastoma Committee (JNBSG) (2020)
  • 著者名/発表者名: Hishiki T、Matsumoto K、Ohira M、Kamijo T、Shichino H、Kuroda T、Yoneda A、Soejima T、Nakazawa A、Takimoto T、Yokota I、Teramukai S、Takahashi H、Fukushima T、Kaneko T、Hara J、Kaneko M、Ikeda H、Tajiri T、Nakagawara A.
  • 雑誌名: International Journal of Clinical Oncology 巻: 25 ページ: 1744～1745
  • DOI: 10.1007/s10147-020-01752-4
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] 【小児がんプロフェッショナル養成講座 基礎編】固形腫瘍の外科治療． (2020)
  • 著者名/発表者名: 米田光宏，菱木知郎，田尻達郎
  • 雑誌名: 小児外科 巻: 52 ページ: 429-433
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] 【小児がんプロフェッショナル養成講座 基礎編】ゲノム医療の基礎． (2020)
  • 著者名/発表者名: 川久保尚徳，菱木知郎，田尻達郎，田口智章
  • 雑誌名: 小児外科 巻: 52 ページ: 460-463
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] 【小児外科臨床研究の基本と展望】小児悪性固形腫瘍の臨床研究の現状と今後． (2020)
  • 著者名/発表者名: 田尻達郎，文野誠久
  • 雑誌名: 小児外科 巻: 52 ページ: 763-767
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] 【そこが知りたいシリーズ：手術で必要な局所解剖（腹壁・後腹膜・泌尿器・腫瘍編）】仙尾部奇形腫 (2020)
  • 著者名/発表者名: 文野誠久，田尻達郎
  • 雑誌名: 小児外科 巻: 52 ページ: 1123-1125
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] 【小児がん手術の問題点 わたしはここを重視している】腹部神経芽腫：腎血管の保護とリンパ節郭清 (2020)
  • 著者名/発表者名: 文野誠久，田尻達郎
  • 雑誌名: 小児外科 巻: 52 ページ: 1245-1248
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] Anti-relapse effect of trametinib on a local minimal residual disease neuroblastoma mouse model. (2020)
  • 著者名/発表者名: Togashi Y, Takemoto M, Takeuchi Y, Tanaka T, Higashi M, Fumino S, Tajiri T
  • 学会等名: 53rd Pacific Association of Pediatric Surgeons (PAPS)
• [学会発表] 小児外科医による小児がんのトランスレーショナルリサーチ． (2020)
  • 著者名/発表者名: 田尻達郎
  • 学会等名: 第77回東海小児がん研究会
  • 招待講演
• [学会発表] 継承したい手術手技;乳児巨大後腹膜奇形腫に対する外科治療戦略． (2020)
  • 著者名/発表者名: 田尻達郎
  • 学会等名: 第82回日本臨床外科学会総会
• [学会発表] 外科医による小児固形腫瘍に対するトランスレーショナルリサーチ． (2020)
  • 著者名/発表者名: 田尻達郎
  • 学会等名: 第59回日本小児外科学会中国四国地方会，
• [学会発表] 小児巨大固形腫瘍に対する整容面に配慮した鏡視補助下手術の工夫． (2020)
  • 著者名/発表者名: 文野誠久，髙山勝平，青井重善，古川泰三，田尻達郎
  • 学会等名: 第82回日本臨床外科学会総会
• [学会発表] 二期的に付属器切除を行った成人型卵巣顆粒膜細胞腫破裂の一例． (2020)
  • 著者名/発表者名: 神部浩輔，田中智子，坂井宏平，青井重善，文野誠久，古川泰三，今津正史，田尻達郎
  • 学会等名: 第42回近畿小児血液・がん研究会
• [学会発表] 神経芽腫転移マウスモデルにおける原発巣局所切除による微小遠隔転移巣への影響． (2020)
  • 著者名/発表者名: 井上真帆，富樫佑一，馬庭淳之介，文野誠久，東 真弓，土谷佳樹，小池宣也，梅村康浩，井之川仁，八木田和弘，田尻達郎
  • 学会等名: 第120回日本外科学会定期学術集会
• [学会発表] 偽性低アルドステロン症を合併した新生児腎metanephric stromal tumorの一例． (2020)
  • 著者名/発表者名: 永薮和也，馬庭淳之介，田中智子，坂井宏平，東 真弓，文野誠久，青井重善，古川泰三，田尻達郎
  • 学会等名: 第57回日本小児外科学会学術集会
• [学会発表] 小児期に発症した成人型卵巣顆粒膜細胞腫破裂の一例． (2020)
  • 著者名/発表者名: 山師幸大，文野誠久，田中智子，坂井宏平，東 真弓，青井重善，古川泰三，今津正史，田尻達郎
  • 学会等名: 第57回日本小児外科学会学術集会
• [学会発表] 神経芽腫局所微小残存病変モデルマウスを用いたMEK阻害剤の再発抑制効果の検討． (2020)
  • 著者名/発表者名: 富樫佑一，竹本正和，竹内雄毅，田中智子，東 真弓，文野誠久，田尻達郎
  • 学会等名: 第57回日本小児外科学会学術集会
• [学会発表] 治療前破裂に対して緊急動脈塞栓術で止血し全身化学療法後に切除した肝芽腫3例の検討． (2020)
  • 著者名/発表者名: 坂野慎哉，加藤充純，文野誠久，土屋邦彦，家原知子，安江志保，遠渡沙緒理，小関道夫，細井 創，吉田和弘，田尻達郎
  • 学会等名: 第58回日本癌治療学会学術集会
• [学会発表] 治療前破裂に対して緊急動脈塞栓術が有用であった肝芽腫3例の検討． (2020)
  • 著者名/発表者名: 坂野慎哉，加藤充純，文野誠久，土屋邦彦，家原知子，遠渡沙緒理，小関道夫，細井 創，吉田和弘，田尻達郎
  • 学会等名: 第62回日本小児血液・がん学会学術集会，
• [学会発表] 転移性神経芽腫syngeneic modelを用いた高リスク神経芽腫の転移巣進行要因の解析． (2020)
  • 著者名/発表者名: Yamashi K, Inoue M, Higashi M, Fumino S, Furukawa T, Tajiri T
  • 学会等名: 第62回日本小児血液・がん学会学術集会，
• [学会発表] 脈管異常に対するシロリムス投与後の血漿サイトカイン分析 (2020)
  • 著者名/発表者名: Ozeki M, Nozawa A, Yasue S, Endo S, Fumino S, Furukawa T, Takemoto J, Souzaki R, Tajiri T
  • 学会等名: 第62回日本小児血液・がん学会学術集会
• [学会発表] 両側性Wilms腫瘍における外科治療の臨床上の問題点． (2020)
  • 著者名/発表者名: Fumino S, Furukawa T, Aoi S, Sakai K, Naito Y, Yagyu S, Iehara T, Hosoi H, Tajiri T
  • 学会等名: 第62回日本小児血液・がん学会学術集会