研究課題
本研究では、OBP-301に多機能がん抑制遺伝子であるp53を搭載した次世代型武装化ウイルス製剤 OBP-702の膵癌間質細胞による免疫抑制機構への効果を検証し、免疫担当細胞浸潤の乏しいcold Tumorである膵癌に対する複合免疫療法の前臨床研究を実施する。間質細胞を標的とすることで他の種々の細胞とのクロストークに関わる様々な分子を制御することができ、がん細胞のみを狙った既存のコンセプトとは異なる革新的な治療法の開発につながる可能性がある。ヒト膵癌細胞上清で膵星細胞株(hPSC)を刺激することでがん関連線維芽細胞(cancer-associated fibroblast; CAF)化が認められ、OBP-702はCAF化hPSC細胞に強いp53発現とser15リン酸化を誘導し強力な抗腫瘍効果を発揮するが、TGF-bで刺激したhPSCでも同様の効果が観察された。ヒト膵癌細胞株とhPSCを共培養することでも同様にCAF化を誘導することができ、OBP-702により有意に強力なp53発現が確認された。ただ、上清中の各種サイトカインをマルチプレックス ELISA アレイシステムを用いて測定したところ、TGF-bとウイルス感染増強効果に相関は認められなかった。ヒト膵癌細胞とhPSCをヌードマウス皮下に同時に移植することで皮下腫瘍が形成され、ヒト間質細胞を有する同所性モデルに近い皮下腫瘍モデルを確立することができた。続いて、ヒト膵癌細胞とhPSCの比率を変えて皮下腫瘍を作成し、2週間経過時点で1:9の割合が最も大きな腫瘍を形成することを明らかにした。ヒト膵癌細胞の培養上清でCAF化したhPSCにおけるOBP-702のウイルス増殖を比較検討したところ、ウイルスコピー数は有意に増加していたが、感染後2時間ですでに差が生じていることから、ウイルス感染のそのものが増強している可能性が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究申請時に立案していたin vitroにおけるCAF化した膵癌間質細胞(ヒト膵星細胞: PSC)において、OBP-702によりp53遺伝子発現が増強することで顕著な抗腫瘍効果をすでに明らかとすることができ、次年度は、2種類のPSCと2種類の膵癌細胞株の組み合わせで3Dモデルを作成し、OBP-702の用量依存性抗腫瘍効果を検討する新たな実験計画を立案することが可能となったため、上記の区分を選択した。
1)本研究申請時に立案していたin vitroにおける膵癌間質細胞(ヒト膵星細胞: PSC)に対するOBP-702の抗腫瘍効果がすでに明らかとなったため、今年度は新たに2種類のPSCと2種類の膵癌細胞株の組み合わせで3Dモデルを作成し、OBP-702の用量依存性抗腫瘍効果を検討する。2)OBP-702のPSCに対する抗腫瘍効果の作用機序としてp53遺伝子発現を想定し、そのPSCにおける発現レベルを蛍光免疫組織染色にて確認する。3)In vivoにおけるPSCの影響を検討するため、膵癌細胞とPSCを同時移植する皮下腫瘍モデルを作成し、その増殖を比較することでPSCの増殖促進効果を検証する。4)膵癌細胞とPSCを同時移植する皮下腫瘍モデルにおいて、OBP-702の効果を検討し、さらに免疫組織染色にてPSCでのp53遺伝子発現を確認する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 5件)
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