研究課題/領域番号 |
19H03733
|
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
村田 聡一郎 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (40436275)
|
研究分担者 |
田所 友美 横浜市立大学, 医学部, 助教 (20507644)
谷口 英樹 東京大学, 医科学研究所, 教授 (70292555)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | オルガノイド / 肝硬変 / 同種 / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
肝硬変は様々な原因で発症する慢性肝疾患の終末像であり、肝移植以外に根治療法がないが、圧倒的なドナー不足の状態である。我々はヒトiPS細胞から分化誘導した肝内胚葉細胞、血管内皮細胞、間葉系細胞を3D培養した肝臓オルガノイドを開発し、肝硬変治療を目指している。肝硬変の肝臓にオルガノイドを移植する場合、経門脈的な移植は門脈圧亢進症状があり困難である。そのためオルガノイドを肝臓表面に移植する手法を開発中である。肝硬変の肝臓表面に移植する場合、安全な剥離法、自己組織化を高める被覆剤、生着効率を高めるために血管化を促進した肝オルガノイドの開発等が必須である。また従来の異種移植では異種免疫応答が見られるため、同種移植による長期的治療効果を確認することが望ましい。本研究の目的はカニクイザル肝硬変モデルにおいて安全な手術手技を確立し、同種肝オルガノイドを用いた長期的な肝硬変治療効果を検討することである。今年度は肝硬変の肝臓表面に安全に組織移植を行える低侵襲な移植法の開発を行った。 1. 肝被膜剥離法の比較検討 肝硬変モデルの肝被膜を針等による鋭的剥離、生体接着剤塗布後の剥離、エネルギーデバイス(電気メス)、超音波外科吸引装置(CUSA)等、臨床で使用可能なデバイスを用いて剥離し、組織損傷、出血時間等の安全性検討を行った。さらに剥離した肝臓表面に胎仔肝組織を移植し、生着効率を比較検討した。その結果超音波外科吸引装置(CUSA)で肝表面を剥離すると出血が有意に少なく、組織生着も良好であった。 2. 被覆剤の検討 肝表面に移植した組織の生着効率および増殖効率を引き出せる被覆剤の開発を行う。現在臨床で使用可能な製剤としてはアルギン酸が組織生着効果が高い事が明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝硬変の肝臓表面に安全に移植可能な被膜剥離法および移植組織の被覆剤を開発し、中型動物で安全性の確認試験を開始した。現在、カニクイザルiPS細胞由来肝臓オルガノイドの作製法の検討も開始しており、順調に研究が進んでいると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでサルiPS細胞を用いてヒトiPS細胞と同様に内胚葉細胞、間葉系細胞、血管内皮細胞の分化誘導に成功しつつある。今年度はさらに分化誘導した3種類の細胞から、長期生着が可能で肝組織の再構築が可能なサルiPS細胞由来肝臓オルガノイドの作製が可能か試みる。また肝オルガノイド移植による治療効果の検討としてカニクイザル肝硬変モデルにサル肝臓オルガノイドを移植し、治療効果の検討を開始する。具体的には、各種肝機能マーカー(アンモニア、ビリルビン、AST, ALT, 凝固能)、線維化マーカー(PIIIP, IV型コラーゲン、組織のヒドロキシプロリン、組織のsirius red染色)、生存率等を検討予定である。さらに低侵襲な被膜剥離法と被覆固定剤を組み合わせた移植法のカニクイザル肝硬変モデルへ応用する。最終的には同種iPS細胞由来肝臓オルガノイドによる肝硬変治療効果を検討する。
|