研究課題/領域番号 |
19H03735
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
篠原 尚 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70319549)
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研究分担者 |
池田 正孝 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (80335356)
石田 善敬 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (80447664)
倉橋 康典 兵庫医科大学, 医学部, 臨床講師 (10834822)
隈本 力 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (90834820)
宇山 一朗 藤田医科大学, 医学部, 教授 (60193950)
能城 浩和 佐賀大学, 医学部, 教授 (90301340)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 人工知能 / 深層学習 / 手術支援 / ロボット支援手術 / 結合組織 |
研究実績の概要 |
研究初年度は,ロボット支援胃癌手術における膵上縁郭清の静止画像を用い,アノテーションとAIのニューラルネットワークを用いた深層学習を行った。郭清組織と動脈や膵臓に介在する疎性結合組織間隙(いわゆる剥離可能層)を画像セグメンテーションにより認識させ,その精度を未学習の手術動画を用いて検証した。当初は剥離可能層を「面」として認識させていたが,手術ナビゲーションとして用いるには表示方法が適切でないと考え,結合組織繊維1本1本を精密に認識させる方法に切り替えた。そのため教材となる静止画の解像度を極限まで上げ,枚数を増やすことにした。結果的にアノテーションに要する時間と労力が膨大になった。認識結果はgood(範囲を正確に認識できている,fair(認識できているが範囲が不十分),poor(認識が不十分)の3段階で定性評価した。18症例を対象に4312枚の静止画を抽出,うち学習に適した画像1800枚を選択した。1枚の画像から最大25箇所,全体で10000箇所以上を対象に,拡大画像を用いて精密に疎性結合組織のアノテーションを行った。未学習動画から剥離操作のシーンを50箇所抽出して検証したところ,good 66%, fair 26%, poor 8%と高い認識精度が得られた。アウトプットの閾値を変えることにより,定量的な検出指標であるIoU (Intersection over Unit)を最大化することができた。表示方法についても色の透過性を工夫するなどしてより視覚的になるように工夫した。このようにアノテーション画像の解像度を上げ,一貫性をより高めることによって目的とする疎性結合組織認識の精度が飛躍的に向上した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標であった,ロボット支援胃癌手術の膵上縁リンパ節郭清場面(右胃動脈切離から左胃動脈切離まで)における疎性結合組織認識については,ほぼ期待された成果が得られている。研究協力者として2名のエキスパート外科医を加えたことにより,教材として供する手術動画によりバリエーションをもたせることができた。今後の解析や認識精度の向上にも資すると思われる。当初はロボット支援手術で得られた結果がブレの大きい腹腔鏡手術にも応用できるかを検証する予定であったが,ロボット支援手術が急速な勢いで普及しており,また本研究が目指す手術支援やその先に位置する自動手術がロボット支援手術により適すると考え,まずは教材を一本化した上で精度の向上を目指すことにした。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目となる2020年度は,深層学習のスコープを広げ,ロボット支援胃癌手術の他の主要シーン(幽門下郭清)や直腸低位前方切除術の直腸後腔剥離場面などにおける認識精度の更なる向上を目標とする。その後,術中視覚支援システムに応用できる学習結果が得られた段階でリアルタイム映像を認識させ,AIが認識した情報をいつどのように表示すれば外科医の視覚を補佐することができるのかを検証し最適な条件を探す。手術室の現場において,切離しようとする部位の安全性をリアルタイムにインジケータ表示する方法を検討する計画である。
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