研究課題/領域番号 |
19H03736
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
森田 直樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 総括研究主幹 (60371085)
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研究分担者 |
尾崎 倫孝 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (80256510)
芳賀 早苗 北海道大学, 保健科学研究院, 特任講師 (60706505)
小澤 岳昌 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (40302806)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肝虚血・再灌流傷害 / プログラム細胞死 / 傷害抑制 |
研究実績の概要 |
ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)は、核DNAに生じた一本鎖切断端を認識してDNA修復関連タンパク質にポリ(ADP-リボース)を結合する酵素である。通常、ポリ(ADP-リボース)化はDNA修復反応を活性化するが,過度のPARPの活性化は、ミトコンドリアに局在するアポトーシス誘導因子(AIF)の切断を誘導し、切断されたAIFが核に移行し、核DNAの断片化を引き起こし細胞死を誘導することが知られている(パータナトス)。このPARPの活性化は、これまで様々なプログラム細胞死(アポトーシス、ネクロプトーシス等)との関係が報告されているが、その病態的な意義はまだよくわかっていない。本研究は、臓器の虚血再灌流傷害抑制の観点から、PARPと各種細胞死や炎症との関係について明らかにすることを目的としている。 マウス肝細胞株AML12細胞を用いた実験では、低酸素・再酸素化によりAML12細胞は細胞死を起こすが、PARPの阻害は明らかにカスパーゼの阻害よりも有効に細胞死を抑制していた。更に、低酸素・再酸素化によって、PARPが活性化されることがわかった。このPARP活性化は、PARP阻害剤にて抑制されたが、カスパーゼ阻害剤では抑制されなかった。また、低酸素・再酸素化によって活性化されたPARPは、抗酸化剤にて有意にその活性が抑制された。一方、低酸素・再酸素化により活性化されたカスパーゼは、予想に反して抗酸化剤ではあまり抑制されなかった。この結果は、カスパーゼよりもPARPの方がレドックス依存的であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
各種プラグラム細胞死を経時的にモニタリングする光プローブを作成して、各々の細胞死と炎症に関連する分子の相互作用を解析していく予定であったが、当初の想定に反し、作製した光プローブが肝細胞内でうまく機能しないことが判明した。各種プローブの構造デザインを再検討した後に各種プローブを再作製した上で、肝細胞株を用いての各種プローブの評価を再度実施する必要が生じたため、当初の計画より進捗は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、PARP活性化と各種細胞死や炎症との関係を更に検討するために、1)PARP活性化による細胞死がレドックス依存的か否かを確認する、2)光プローブを改良し、同プローブを用いて、PARPの活性化とアポトーシス、ネクロプトーシス等との関係を確認する。 更に、マウスを用いた肝虚血再灌流実験により、PARPの活性化と肝傷害の関係について調べる。
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