研究実績の概要 |
心臓内幹細胞注入による近隣臓器への集積作用に着眼し、移植した細胞が停留した肺組織内から、高度に上昇した6つの候補遺伝子について、心臓組織の修復に最も関与する因子の絞り込み実験を実施した。実験モデルは極度の低酸素環境である単心室モデルであるため、HIF-1 alphaの上昇は除外した。特記すべきは、様々な抗炎症因子ならびに繊維化抑制因子の中で、HMG-B1, SMAD6, BMPR2,をはじめ、VCAM-1, TSG6, S100A10, Thrombospondin-4などの細胞間接着や細胞間マトリックスとの情報伝達より、ヘパリンやカルシウムと特異的に結合する関連タンパクを同定した。また、包括的RNAシーケンスも同様に実施し、肺組織内のマクロファージの極性制御に関与するマイクロRNA(miR)であるmiR-150, miR-147, miR-155, miR-451, miR-127ならびにmiR-Xを同定し、TNF-alpha刺激による心筋細胞に対する抗炎症や細胞死抑制作用について、in vitroの細胞培養実験でmiR-Xが最も心筋修復に寄与している因子であると結論づけた。さらに、ラット単心室モデルや肺動脈絞扼術による肺高血圧症モデルを構築し、レンチウイルスでmiR-X及びantago miR-Xをin vivoで過剰発現させ、心室筋組織内での繊維化領域の縮小効果について検討し、in vitroと同様の組織修復効果があることを明らかにした。
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