心臓内幹細胞の全身投与によって、移植した細胞が停留した肺組織内から、心臓組織の修復に最も関与する複数のmicroRNA (miR)を同定した。うち、miR-21、miR-221およびmiR-217は、ラット単心室や肺動脈絞扼術による右心負荷モデルにおいて、モデル構築後1から6時間までに最も顕著に上昇し、TNF-alpha刺激による心筋細胞内における情報伝達経路の初期における炎症惹起ならびに後期における抗炎症反応に関わるstage別の異なる役割があることを突き止めた。また、これらのmiRの発現上昇度はCX3CR1欠損マウスを用いた右心負荷モデルでは、一様にキャンセルされることを確認した。一方、miR-21およびmiR-221欠損マウスにおいて、右心負荷に伴う心筋細胞死や組織線維化は細胞移植で抑制されず、抗炎症性miR-217の後期上昇も認めなかった。また、miR-217欠損マウスでは、TNF-alphaやPDGF-alphaの過剰な発現上昇と組織内でのcollagenの貯留と線維芽細胞の増殖を認めた。これらのデータから、移植細胞がロッジした肺組織内において、既存のマクロファージを直接刺激することで、二相性の炎症惹起および組織修復を司る一連のmiRsの自律的な発現調節過程が連続的に生じていることを明らかにした。本研究において、新たに同定した肺組織内マクロファージにより分泌されるmiR-217はmiR-21/221を介して制御されており、in vivo導入することで、単心室ラットの生存予後の改善ならびに肺高血圧症による右心負荷がもたらす心室筋組織の線維化抑制に対して、細胞移植療法と同様の治癒効果があることを明らかにし、次世代の細胞フリーの心筋組織修復法として、今後、研究開発をさらに発展させていく。
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