研究課題
三尖の大動脈弁は左心室と大動脈の間に位置し、血液の逆流を防止する役割を担っている。大動脈弁狭窄症(AS)は、加齢に伴って大動脈弁組織に石灰化が生じる疾患で、心不全を招くことがよく知られている。本疾患に対する治療法としては、石灰化した大動脈弁を切除して、人工弁を移植する弁置換手術があるが、大動脈弁石灰化の分子メカニズムが不明であることから、その薬物根治療法は未だ確立されていないのが現状である。そこで本研究では、新たなAS分子標的治療法の開発を目的として、外科的に切除した石灰化大動脈弁を、生化学・分子生物学的におよび組織学的に詳細に解析する。これまでの網羅的遺伝子発現解析から、石灰化大動脈弁組織特異的に高発現、あるいは低発現するタンパク質を見出してきているが、大動脈弁石灰化ステップにおける役割は不明であった。そこで、in vitroの石灰化アッセイ実験系を用いて、候補遺伝子の発現をRNA干渉法をにより抑制する実験を実施したところ、コントロール群に比べて有意に石灰化の程度が低下するもの、あるいは亢進させる遺伝子が見つかった。細胞の石灰化はアリザリンレッド染色により評価しており、複数回の実験において高い再現性を示しており、細胞の石灰化過程で重要な役割を果たしているものと考えられる。現在これらのタンパク質レベルでの機能と細胞石灰化シグナルとの関係性について、細胞生物学的手法を用いて解析を進めている。一方、網羅的遺伝子発現解析などから治療標的候補として挙がってきた分子については、遺伝子改変マウスを作成し、in vivoでの機能解析を進めているところである。
2: おおむね順調に進展している
当初計画していた実験については全て実施し、想定範囲内の結果を得ており、今後も計画通りに研究を進める予定としている。
我々が見出したAS治療候補遺伝子をノックアウトした遺伝子改変マウスを作成し、大動脈弁をワイヤーで損傷させることで弁石灰化を誘導できるASモデル(Honda S et al. ATVB 2014)を用いて、大動脈弁石灰化におけるin vivoでの分子機能解析を実施する予定としている。
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Ann Thorac Surg.
巻: 19 ページ: 31717-5
https://www.m.ehime-u.ac.jp/school/surgery2/