研究課題/領域番号 |
19H03741
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
宮本 伸二 大分大学, 医学部, 教授 (70253797)
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研究分担者 |
西邑 隆徳 北海道大学, 農学研究院, 教授 (10237729)
穴井 博文 大分大学, 医学部, 教授 (20291544)
中山 泰秀 大分大学, 医学部, 客員研究員 (50250262)
岡本 啓太郎 大分大学, 医学部, 病院特任助教 (50723524) [辞退]
岩井 良輔 岡山理科大学, フロンティア理工学研究所, 講師 (60611481)
首藤 敬史 大分大学, 医学部, 講師 (60649763)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 再生医療 / 大動脈 / 小児心臓外科 / 生体材料 |
研究実績の概要 |
体の皮下に光造形で作成した高分子製の鋳型を1ヵ月程度埋入させるだけで、完全に自己組織のみからなる自分用の移植用組織体が自動的に得られる画期的な再生医療技術「生体内組織形成術」(体内造形)を基盤として、それによって作成された自己生体材料(膜)が自己心膜より生体適合性、耐久性に優れることさらには成長する可能性を証明するための大動脈使用を目的としより高い耐圧性と耐久性を獲得するための鋳型の最適設計を行い、移植実験によって自己組織化し生着する再生能力、耐久性、成長性を調べ、待望の成長性の可能性を有する「再生型自己代用大動脈(バイオチューブ)」の安全な臨牀応用へと繋げる実験を行った。 本年度は子ヤギ5頭に対して皮下に基材を植え込んで生体内組織形成術にて生成したバイオチューブ(直径14m)を用いて、1頭に対してエタノール固定をした自己心膜を用いて、体外循環下に心停止を行い、上行大動脈位に移植した。体外循環から離脱できなかったものが自己心膜群で1頭、バイオチューブ群ではなかった。術後経過中に突然死したヤギはなかった。7か月で安楽死させたヤギではグルタールアルデヒド固定自己心膜では上行グラフトは著明な石灰化を呈していたが、エタノール固定自己心膜グラフト、バイオチューブはいずれも石灰化を呈していなかった。組織分析ではグルタールアルデハイド固定自己心膜は自己心膜構造がはっきり残っていたが、バイオチューブではバイオチューブの組織はα-SMA細胞等の幼弱な細胞に置換され厚い弾性線維が含まれていた。 子ヤギへの異種移植の前実験として、ブタ皮下で作成したバイオチューブを脱細胞処理しヤギ頸部に移植する実験を2頭行った。3か月経過した時点で、若干の径の縮小がみられたが閉塞はしなかった。1頭はバイオチューブの自己血管化が進んでいたが、1頭はバイオチューブ組織が多く残っており自己血管化がすすんでいなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の影響で他県からの子ヤギの輸送、供給に障害が生じたこともありモデル作成のペースが遅くなった。ウシでの生体内組織合成によっては安定してよい状態のバイオチューブが得られないということがわかり、かつ同種移植で見られる自己組織化が脱細胞したウシバイオチューブでは起こりにくいということが判明したので、動物種を牛からブタに変更したが、ブタでのバイオチューブ作成は東京の施設でしか行えなかったためこれもCOVID-19の影響をうけ遅滞することとなった。また19年度の経験からある程度想定はしていたがやはり体外循環からの離脱困難例があり、予定頭数のモデルが作成できなかった。更に異種バイオチューブの移植実験で脱細胞処理に問題があるのではないかとの疑問が生じ、岡山理科大学で脱細胞処理の改善をすすめており、そのため実際の子ヤギ上行大動脈への異種移植は20年度中に行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
脱細胞処理方法は確定されたので今年度前半にさらに同種移植のモデルを増やすとともに、ブタバイオチューブを用いた異種移植モデルを作成する。昨年作成しているモデルとともに順次安楽死をさせながら組織結果を得ていく。COVID-19の今後の広がりは不確定要素だが、前年度の経験から対応策を得ておりそれほどの影響はないものと思える。また経験値により子ヤギの術中、術後の管理は以前より安定しているため今後はより多くのモデルを得ることができると考える。
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