研究課題
肺に豊富に存在する免疫担当細胞であり、かつ自然免疫系亢進と獲得免疫系活性化の双方に重要な役割を果たすマクロファージのうち、移植後長期にドナー肺に存在し、拒絶反応に重要な役割を果たしうる肺胞マクロファージに着目し、1)肺胞マクロファージの移植肺内での動態を明らかにし、虚血再灌流障害から拒絶反応発症・抑制における肺胞マクロファージの役割を解明すること、2)肺胞マクロファージによる免疫寛容誘導を含めた新たな同種移植拒絶戦略の確立をはかること、3)肺胞マクロファージが異種肺移植生着延長のための新規標的因子となるかを評価する、の3点を解明することを最終目標として、ミニブタを用いた前臨床研究を開始した。平成31年度は、特に虚血再灌流障害の際に肺胞マクロファージがどのような動態を示すのかということを明らかにするための基礎実験に着手した。免疫抑制療法の投与を必要とせず、温虚血による再灌流障害を惹起するモデルによる評価(自然免疫系の関与を主として評価)を行うため、最も簡便なモデルとして、クラウン系ミニブタを用いて、90分間の温虚血による再灌流障害モデル(左肺動脈、左肺静脈および左主気管支を90分間遮断した後に再灌流を行うことで障害を惹起)を用いて評価を開始した。このモデルに対し、再灌流2時間、2日後、7日後に気管支鏡検査(気管支肺胞洗浄)を行い、肺胞洗浄液中の種々のリンパ球と肺生検所見との対比に基づき、虚血再灌流障時の障害の指標を明らかにするとともに、障害時に肺胞マクロファージの表面マーカーがどのように変化するかについて、評価を行っている。また最終的に異種移植モデル(ブタをドナーし霊長類に移植)での実験を行う予定にしていることから、今年度は霊長類間同種肺移植モデルを用いて、経時的に胸部X線、気管支鏡生検、気管支鏡下肺胞洗浄液中の細胞分画を評価する実験に着手している。
2: おおむね順調に進展している
上記のように、ミニブタ虚血再灌流障害モデル、あるいは霊長類間同種肺移植モデルを用いて、胸部X線、肺あるいは気管支鏡生検、肺胞洗浄液中の細胞分画を評価する実験を実施し、現在結果の集積および解析を行い、同種あるいは異種肺移植実験における肺胞マクロファージを中心とする自然免疫系の役割を解明する実験を計画的に進める体制が整っており、おおむね予定通りに進捗しているものと判断する。
令和2年度は引き続き温虚血再灌流障害モデルを用いて、画像および各種検体(生検あるいは気管支肺胞洗浄液)の解析に基づいて肺胞マクロファージが虚血再灌流障害の進展について果たす役割を明らかにする。さらに同種移植モデルを用いて虚血再灌流障害(自然免疫)に加え、拒絶反応(獲得免疫)に果たす肺胞マクロファージの役割の解明をはかる実験に進んでいく方針である。
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Xenotransplantation
巻: 27 ページ: e12552
10.1111/xen.12552
http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~xenotx/index.html