研究課題
網羅的ゲノム(DNA)情報と疾患コントロール(治療薬の選択)を結びつけ病態解明と治療の最適化を図るPrecision Medicine(精密医療)は、特にがん領域で発展している。本研究では緩和ケア領域におけるがん関連疼痛に対する精密医療を実現に向けた臨床研究を行った。【研究①】疼痛重症化因子のP2Y12受容体について、血小板凝集能を介したP2Y12受容体機能(ARU208秒参照値)とがん開腹術後痛の重症度および鎮痛薬必要量の関連解析を行い、術中オピオイド使用量はP2Y12受容体機能と負の相関を示し、術後痛の指標(オピオイド使用量、術後痛NRS等)との相関は示されなかった。加えて、P2Y12受容体上の遺伝子多型は術前冷刺激への侵害閾値低下とオピオイド反応性との関連が示されるものがあり、また、慢性疼痛の重症度と関連するものが発見された。【研究②】神経障害性疼痛の発症・重症度規定因子であるリゾリン脂質(LPA)に注目し、乳がん患者と卵巣がん患者でタキサン系化学療法剤を使用しがん化学療法誘発性末梢神経障害を発症している、あるいは、発症していない患者の血液検体から全ゲノムレベルの一塩基多型を計測し、LPA受容体1-6の一塩基多型の関連解析を行い、コホートにより影響の方向性は異なるがLPA受容体1の遺伝子多型が化学療法誘発性末梢神経障害の発症に関連することを明らかにした。【研究③】網羅的一塩基多型解析(genome-wide association study)によるがん関連疼痛(特にがん化学療法誘発性末梢神経障害)の新たな疼痛重症化因子および治療反応性規定因子について探索し複数の新規分子(LPAの産生酵素であるオートタキシン他)が発見された。これらの研究は、緩和ケア領域におけるがん関連疼痛に対するPrecision Medicine(精密医療)の実現の礎となる可能性がある。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Br J Anaesth
巻: 127 ページ: 43
10.1016/j.bja.2021.04.014