研究課題/領域番号 |
19H03752
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
細井 昌子 九州大学, 大学病院, 講師 (80380400)
|
研究分担者 |
坂本 英治 九州大学, 大学病院, 講師 (00295859)
柴田 舞欧 九州大学, 医学研究院, 助教 (20734982)
二宮 利治 九州大学, 医学研究院, 教授 (30571765)
安野 広三 九州大学, 大学病院, 助教 (30747994)
外園 栄作 九州大学, 医学研究院, 講師 (60404042)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 失感情症 / 愛着 / オキシトシン / 脳画像 / 中枢性感作 / 慢性疼痛 / 線維筋痛症 / ミクログリア |
研究実績の概要 |
失感情症は慢性疼痛の高い重症度、低い治療効果と関連することが示されている。重症で難治性の慢性疼痛である線維筋痛症患者群は一般人口と比べ失感情症を多く有することが報告されている。これまで線維筋痛症とその他の慢性疼痛の間で失感情症の治療効果への影響に違いがあるかについては検討されていない。今回我々は両患者群への外来治療の効果を失感情症の有無別に検討した。対象は九州大学病院心療内科へ紹介受診後に通常外来治療を継続した慢性疼痛患者96名(平均年齢46.8±14.1、女性83.3%、線維筋痛症35.4%)。痛み強度(Visual Analogue Scale)、痛みの破局化(Pain Catastrophizing Scale)、失感情症傾向(Toronto Alexithymia Scale-20:TAS-20)を初診時、約半年後に測定した。線維筋痛症とその他の慢性疼痛の各々の群で、失感情症(初診TAS≧61)の有無別に改善を評価した。 線維筋痛症(n=34)では痛み強度の改善は失感情症の有無にかかわらず有意ではなかったが、破局化は失感情症(-)群(n=20)で有意に改善した。その他の慢性疼痛(n=62)では失感情症(-)群(n=41)で痛み強度、破局化の有意な改善がみられた。 心療内科外来治療初期の失感情症の存在は、線維筋痛症では痛み認知、その他の慢性疼痛では痛み症状・認知に対して治療効果を阻害する可能性がある。 これらの失感情症の程度や線維筋痛症の有無といった臨床情報に関連するバイオマーカーとして、脳内ミクログリア関連異常、尿中オキシトシン値、自律神経機能や安静時の脳活動(fMRIで測定)が想定され、臨床情報と共に定量的な情報を収集した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
九州大学病院心療内科を初診する慢性疼痛難治例に対して、尿中オキシトシンを測定するためのサンプル収集を開始し、初診時の質問紙収集システムが順調に行われる状態になっている。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度から開始している新たな情報収集システムによる解析(タッチパネル式自記式質問紙システムによる効率的な臨床情報の集積、新たな愛着・認知・情動を図る投影法の開発)に加えて、自律神経機能検査、血液・尿のデータ収集システム、脳画像情報収集システムの構造化などを行い、臨床的活動が効率的な研究システムとリンクできるシステムを構築し、得られたデータのパイロット解析を行っていく方針である。
|