研究課題/領域番号 |
19H03752
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
細井 昌子 九州大学, 大学病院, 講師 (80380400)
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研究分担者 |
坂本 英治 九州大学, 大学病院, 講師 (00295859)
柴田 舞欧 九州大学, 医学研究院, 助教 (20734982)
二宮 利治 九州大学, 医学研究院, 教授 (30571765)
安野 広三 九州大学, 大学病院, 助教 (30747994)
外園 栄作 九州大学, 医学研究院, 講師 (60404042)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 尿中オキシトシン / 性別差 / 年代差 / 症例対照研究 / 久山町研究 |
研究実績の概要 |
オキシトシンは,最近の研究では,社会的認知,不安や母性行動などの様々な行動における役割が報告されているが,未だその生理学的意義や臨床的意義について十分に解明されていない.オキシトンの測定は,血漿での測定が主で,尿を検体とした報告は少なく,血漿以上に不明な点が多い.そこで本研究では,非侵襲的で検体採取の容易な尿を対象として健常者における尿中オキシトシン排泄量に関する検討を行い,基準範囲の設定を試みるとともに,性別差や年代間でオキシトシンの排泄量に違いがあるのかについて検証することを目的とし、慢性疼痛症患者の尿中排泄量についても合わせて検討した。 2017年久山町生活習慣病予防健診受診者291名(男性133名:年齢67.0 歳(中央値):35-91,女性158名:年齢69.7 歳(中央値):35-86)の尿検体から,所定のプロトコルに従い,オキシトシンを抽出し測定し、以下の結果が得られた。 1)参考基準範囲:尿中オキシトシン濃度の参考基準範囲は,男性6.3-223.9 ng/g・Cre,女性5.4-356.1 ng/g・Creであった.2)性別差:男女間で有意な差は見られなかった(p = 0.879,Mann-Whitney U検定).3)年齢階級別排泄量:男女ともに年齢階級ごとの尿中オキシトシン排泄量に有意な差がは認められなかった(それぞれp = 0.574,p = 0.365, Kruskal Walis検定).4)健常者と疾患者の比較:慢性疼痛症患者101名と健常者群間において有意な差がみられれ慢性疼痛症患者群において高値を示した(p < 0.001,Mann-Whitney U検定). 結論として、検診受診者291名を用いた尿中オキシトシン排泄量の濃度分布は対数正規分布を示し、慢性疼痛症患者群の尿中オキシトシン排泄量は健常者群と比べ有意に高値を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
久山町検診で得られた一般住民のサンプルから年代・性別を配慮した291名、および九州大学病院心療内科を受診した慢性疼痛外来患者101名の尿中オキシトシン値を測定し、解析が終わり、論文準備中である。さらに、線維筋痛症患者の血漿中のエクソソーム解析も進み、論文準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
一般住民と慢性疼痛患者の尿中オキシトシンについて、得られた結果を論文化するとともに、九州大学病院心療内科に入院するに至った線維筋痛症重症例において、睡眠異常、悪夢と食いしばり、口内常在菌研究を進め、線維筋痛症で未だ解明されていない愛着障害傾向と関連したバイオマーカーを探索し、病態解明を進めていく方針である。
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