研究課題/領域番号 |
19H03753
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
後藤 隆久 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (00256075)
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研究分担者 |
宮崎 智之 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (30580724)
杉浦 悠毅 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (30590202)
新倉 怜 横浜市立大学, 医学研究科, 特任助教 (70760750)
高瀬 堅吉 自治医科大学, 医学部, 教授 (80381474)
東條 健太郎 横浜市立大学, 医学部, 講師 (80737552)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 敗血症 / PICS |
研究実績の概要 |
本研究の目標はラットを用いた敗血症後の中枢神経系post-ICU syndrome PICSモデルを構築し,脳における網羅的な代謝産物解析を行うことで,敗血症後の中枢神経PICSの病態メカニズム,新規治療法を探索することである。そのためにラットの敗血症後中枢神経PICSモデルの構築を目指して研究を行ってきた。前年度には10週齢Sprauge-Dawleyラットを用いて盲腸内容物懸濁液を用いた敗血症モデルを作成し,2週間後の段階でSocial Recognitionテスト,Inhibitory Avoidanceテストを施行したが,shamグループと比較して明らかな成績の低下が見られなかった。そこで,より長期的に炎症が継続する敗血症モデルとして盲腸結紮穿刺(CLP)モデルを作成した上で,2週間後の Inhibitory Avoidanceテストの成績をsham手術群と比較した。致死率は50%以上の敗血症モデルが作成できたものの,2週間後にはsham手術群と比較し有意な成績の違いは見られなかった。さらに,過去の報告においては系統の異なるWisterラットが用いられていたことから同じ様にCLPモデルを作成し,Inhibitory Avoidanceテストを行ったが,やはり2週間後にはsham手術群と比較して明らかな差異が見られなかった。これらの実験を踏まえると10週齢程度の若年ラットにおいては敗血症後の中枢神経系PICSは顕著ではないと考えられた。一方で,行動実験終了後の脳の組織ホモジネート中のサイトカイン濃度を測定したところ,sham手術群よりもIL-1βの増加が見られた。さらに,行動実験の成績によって動物をグループ分けすると,成績が悪いグループでIL-1βが有意に高い結果となった。これらから,若年ラットの敗血症において,脳の炎症が回復期の行動実験の成績悪化と関連している可能性が示唆されたが,中枢神経への影響の程度はそれほど大きくないということが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
敗血症の回復期において,当初の想定とは異なり明らかな中枢神経系の障害が見られなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後,脳の組織ホモジネートや血液中のサイトカイン等の濃度を測定し,実際に敗血症からの回復期において生化学的な異常が見られていないのか詳細に解析を行う予定である。
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