研究課題
本研究の目標はラットを用いた敗血症後の中枢神経系post-ICU syndrome PICSモデルを構築し,脳における網羅的な代謝産物解析を行うことで,敗血症後の中枢神経PICSの病態メカニズム,新規治療法を探索することであった。2021年度より長期的に炎症が継続する敗血症モデルとして盲腸結紮穿刺(CLP)モデルを作成し,2週間後に Inhibitory Avoidanceテストを行った上で,血中のサイトカイン濃度を調べたところ,若年ラットの敗血症では,脳の炎症が回復期の行動実験の成績悪化と関連している可能性が示唆されたが,中枢神経への大きな影響は観察されなかった。これを踏まえ,当該年度には中枢神経ではなく,身体的PICSのモデル構築,解析を行う方針に切り替え研究を行った。最初にCLPモデルマウスを用いて,2週間後までの運動機能について評価を行った結果,自発運動機能はある程度改善したものの,ワイヤーハングテストにおける握力の低下が継続しており,また協調運動機能も低下している傾向が見られた。一方で,筋断面積については明らかな低下は見られず,機能的な原因で筋力の低下が起きている可能性が示唆された。また,急性期における筋肉の代謝変化を見るためにLPS誘導性ショックモデルにおける筋肉のメタボローム解析を行ったところ,異化亢進に加え,ケトン体の増加やアセチルカルニチン/カルニチン比の低下といった代謝障害を示唆する結果が得られた。以上から,若年マウスを用いた敗血症モデルにおいては急性期に異化亢進,代謝障害が生じ,機能不全を主因とする筋力低下が生じることが示唆された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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