敗血症は,感染症に起因する臓器不全が進行する病態である。肺,心臓,血管,肝臓,腎臓,脾臓,消化管,脳,筋肉などすべての臓器は敗血症病態において障害を受ける。敗血症病態では,インターロイキン6(IL-6)などのサイトカイン濃度が上昇することが知られている。しかし,敗血症病態において活性化されるIL-6受容体作用については,詳細な時系列での解析が期待される。 IL-6受容体により活性化される転写因子STAT-3(signal transducer and activator of transcription-3)は,免疫と炎症に関わる転写因子である。本研究 は,敗血症モデル動物として盲腸結紮穿孔マウスおよびヒト培養細胞を用いて,敗血症の類似する状態を作成し,STAT-3活性の役割を解析した。敗血症病態における主要臓器のSTAT-3活性をゲルシフト法で解析し,敗血症に伴う臓器不全との関連を評価することを目的として施行された。 STAT-3デコイオリゴデオキシヌクレオチ(ODN)のin vivoでの敗血症マウスへの導入が,敗血症性臓器傷害の軽減に有益であることを確認した。 動物モデル における敗血症は,マウスの盲腸結紮および穿刺によって誘発し, STAT-3は上流のキナーゼJAK2活性と共に肺や腎臓などの主要臓器組織で急速に活性化されることを確認した。また,STAT-3デコイODNの尾静脈からの導入により,肺などの組織病理学的変化が改善することが確認した。また,STAT-3デコイODNの評価として,炎症性サイトカインの産生が抑制されることが確認できた。本研究成果などは,Biochem Pharmacol(2022:114909)などとしてまとめた。
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