研究実績の概要 |
本研究の目的は、敗血症など重度侵襲時における新規炎症増幅因子Arid-5a関連の発現を評価し、多臓器障害モデルにおいて主に血管内皮をターゲットとした骨髄由来単核球細胞移植を行い、細胞移植の有効性を新規炎症制御メカニズム、血管内皮構造変化の視点から詳細に検討することである。2021年度は、以下の3点に重点をおいて研究を進めた。①敗血症など侵襲時生体反応において、新規炎症増幅因子関連(Arid-5a/Regnase-1)の発現がどのように変化するか、また血管内皮細胞障害の指標としてsyndecan-1の血中変化などを評価した。②多臓器障害モデルにおいて骨髄由来単核球細胞移植を行い、その血管内皮保護作用を主にグリコカリックスの脱落や形態変化などに注目して評価した。また、組織におけるArid-5aの発現に及ぼす影響などを評価した。 以上の解析から、次のような結果を得た。 1)パブリックデータベース から抽出した、敗血症患者における単球のArid-5a関連分子(Arid-5a, Regnase-1, STAT3)の評価を行い、これらの炎症増幅関連RNA発現がIL-6など炎症性サイトカインのRNA発現と並行して有意に増強することを明らかにした。 2)敗血症患者において全血RNAシークエンス解析を行い、Arid-5a, Regnase-1, STAT3のRNA発現が増加することを明らかにした。 3)走査顕微鏡解析による血管内皮グリコカリックスの評価法を確立し、多臓器障害モデルにおいてグリコカリックスが急性期から多臓器において脱落して血管内皮傷害が広範囲に見られることを明らかにした。血中syndecan-1濃度も急性期において有意な上昇を示した。一方、骨髄単核球細胞移植は血管内皮グリコカリックスの脱落を著明に抑制して内皮細胞保護作用を発揮することを明らかにした。同時に、組織において骨髄単核球細胞移植にともなうArid-5a発現に及ぼす影響を評価した。
|