研究課題/領域番号 |
19H03770
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮本 享 京都大学, 医学研究科, 教授 (70239440)
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研究分担者 |
高橋 淳 京都大学, iPS細胞研究所, 教授 (10270779)
片岡 大治 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (40359815)
小泉 昭夫 京都大学, 医学研究科, 名誉教授 (50124574)
山下 潤 京都大学, iPS細胞研究所, 教授 (50335288)
峰晴 陽平 京都大学, 医学研究科, 助教 (50716602)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | moyamoya disease / RNF213 / iPS / gene editing |
研究実績の概要 |
もやもや病は原因不明で進行性の脳血管障害である。我々は過去にRNF213遺伝子を感受性遺伝子として特定し、患者の8割にR4810K変異が認められることを報告した。本研究では、試験管モデルと動物モデルおよびin silicoのモデルを用いて、もやもや病の分子メカニズムの解明を目指している。1年間の研究の結果は以下の通りである。(1)RNF213以外の第2の感受性要因の分析については、変異を持たない患者において感受性遺伝子を複数同定した。その機能解析を行うとともに、別コホートでの検証を行っている。また、R4810K変異保持者の浸透率に影響する因子の解析を進めている。(2)iPSを用いた試験管内疾患モデルについては、R4810K変異陽性のmutant-iPSを野生型のrevertantに遺伝子編集して、変異の純粋な機能について分析を進めている。内皮細胞における遺伝子発現や表現型の差異を明らかにした。(3)動物モデルについては、R4810Kに相当するマウスの遺伝子改変モデルを用いて分析を進めている。アルコールや高脂血症などの環境要因を組み込んで、モデルの樹立を目指している。(4)Computational fluid dynamics(CFD)解析では、病期の進行予測可能性について検討した結果、通常のパラメーターでは予測が困難であることが明らかとなった。(5)片側もやもや病の対側進行のリスクを評価して、R4810K変異、男性、若年、アルコールが対側進行のリスクであることを明らかにした。また、R4810K変異がPCA狭窄のリスク因子であり、前方循環と同一側に出現し、予後に関連することを見いだした。ウイルス感染などの環境因子と疾患発症との関連についても実験を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iPS細胞実験においては、mutant株を野生型に戻したrevertant株を樹立し、高純度内皮細胞を樹立して、一細胞トランスクリプトーム解析等も用いて、変異の影響を明らかにした(論文作成中)。これは当初予定よりも発展した内容であり、第2の感受性因子をモデルに組み込む実験は完了していないが、概ね順調に進んでいると判断した。CFD解析については論文化を進めている。アルコールがR4810Kと相互作用のある環境要因であることを明らかにした(論文採択)。今後、動物や試験管モデルに組み込む予定で、計画通り順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
血管内皮細胞と同様に、平滑筋細胞においても、mutantとrevertantを比較して、R4810K変異の影響を明らかにする。平滑筋細胞と内皮細胞の共培養により疾患モデルの確立を目指す。動物モデルについては、遺伝子改変マウスにアルコールに相当する負荷を加えるなどして、疾患モデルの確立を目指す。ヒトにおけるR4810K変異以外の要因やR4810K変異の浸透率に影響するエピゲノム因子を明らかにし、もやもや病の試験管モデル、動物モデルに組み込むことで、より正確なモデルを確立し、分子メカニズムの全容解明に繋げる。
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