研究課題/領域番号 |
19H03772
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
荒木 令江 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (80253722)
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研究分担者 |
江良 択実 熊本大学, 発生医学研究所, 教授 (00273706)
尹 浩信 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (20282634) [辞退]
北川 孝雄 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教(特命) (20614928)
武笠 晃丈 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (90463869)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Neurofibromatosis / NF遺伝子 / proteomics / interactome |
研究実績の概要 |
神経線維腫症は、多発性神経線維腫に加え悪性腫瘍等を伴う1型(NF1)、及び類似症状に加え中枢神経系腫瘍を高頻度に伴う2型(NF2)からなる治療困難な遺伝性疾患である。本研究では、両疾患の関わる神経系分化異常と腫瘍発生機序の解明、および治療標的の開発を目的としている。 本年度は、様々な細胞において樹立を進めている各種NF病態モデル細胞を用いて、これらの特異性に対応する前処理法、解析法を最適化することによって、特異的な神経系分化異常および腫瘍化に関わる細胞内分子群の異常ネットワークを、独自のトランスクリプトミクス・プロテオミクスを介して展開した。同時進行として、新しいインタラクトーム解析技術法の最適化を行い、これを用いて、NF遺伝子産物に関わって大きく変動する分子の結合コンプレックスとそれを介したネットワークを解析した。NF欠損モデル細胞において、NFの欠損によってどのネットワーク因子が最も影響を与えられているかを部分的に絞り込んだところ、NF1に関して、複数のターゲットとなりうる因子群で、特にアポトーシス阻害、およびタンパク質翻訳伸長因子群が特異的な標的候補となることが判明した。又、NF2に関しては、Hippoシグナルに関連するネットワーク分子群が同定された。 本研究から得られた結果は、NFの新規治療戦略の構築のための重要な基礎情報となることから、今後引き続き進展させることによって、実質的な臨床応用に繋がる成果を得ることができる可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、独自に樹立した各種NF病態モデルを用いて、特異的な神経系分化異常および腫瘍化に関わる細胞内分子群の異常ネットワークを独自のトランスクリプトーム・プロテオーム統合解析システムにて解析することを目標とした。同時進行として、新しいインタラクトーム解析技術をこれらの細胞を用いて、最適化し、NF1/2遺伝子産物に結合して機能するコンプレックスとそれを介したネットワークを解析し、得られた情報をユニークな統合マイニング法にて融合抽出・絞り込みを行うことを計画していた。途中、プロテオーム解析に使用していた質量分析装置の不具合があり、予定が変更されたが、修理は順調に終了し、ほぼ再計画した予定通りに解析は推進している。又、独自解析ソフトウエアによる本課題への最適化は成功しており、関連因子の検索に有用であることが判明しているため、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、両疾患の関わる神経系分化異常と腫瘍発生機序の解明、および治療標的の開発を目的として、それぞれの原因遺伝子NF1/NF2の欠損変異病態モデル、および患者由来iPS細胞を順次準備でき次第解析に用い、本課題に最適化したユニークなトランスクリプトーム・プロテオーム・メタボロームおよびインタラクトームの大規模な定量的統合解析を行う。得られた全てのデータを統合マイニングし、細胞内にて異常化している特異的病態分子シグナルネットワークを抽出する。これによって、最も具体的な治療標的となりうる因子群を詳細に明らかにすることを目標にして、研究を推進する。
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