研究課題/領域番号 |
19H03782
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中田 研 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (00283747)
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研究分担者 |
前 達雄 大阪大学, 医学系研究科, 特任教授(常勤) (10569734)
金本 隆司 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20512049)
下村 和範 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (40755998)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 疼痛関連因子 / 繰り返し圧縮刺激 / コラーゲン / インテグリン / マトリックスメタロプロテアーゼ |
研究実績の概要 |
メカニカルストレスは、変形性関節症(OA)発症・進行の重要な要素である。我々は、独自開発した実験系を用いて、三次元培養下のヒト滑膜細胞・軟骨細胞へのメカニカルストレスが、炎症メディエーターやマトリックス分解酵素の産生を促進すること、さらに、近年治療上注目されている疼痛関連分子(NGF、Tac1)の遺伝子発現を促進することを見出した。当研究室のin vitro実験系は、OAの病態に近似したモデルとして、様々な培養細胞のメカニカルストレスへの応答を、PGE2/NGF/MMPの産生量によって簡便に評価することが可能である。この強みを生かし、①メカニカルストレスが、関節組織(関節軟骨・滑膜・半月板)構成細胞において、炎症メディエーター/疼痛関連因子/MMPの産生を促進する機構の探索、②メカニカルストレス受容関連因子の個体身体活動への関与の検証を行うことによって、OAの病態解明・治療開発に有用な基礎的知見の獲得を目指している。また、OAや半月板変性の病態解明・治療開発において、細胞培養は重要なツールであるが、細胞微小環境によって、細胞挙動が大きく異なることが明らかになっている。当研究室で使用中のコラーゲンスポンジ細胞担体を用いて、コラーゲンゲルが三次元培養細胞に与える影響について、関節軟骨由来細胞・半月板由来細胞・滑膜由来細胞などを対象とした検証を実行中である。本年度に得られた主たる成果は、①三次元培養下の関節軟骨由来細胞への繰り返し圧縮負荷によって、炎症メディエーター(PGE2、IL-6など)および疼痛関連分子(NGF、Tac1など)の発現が促進されること、②関節軟骨由来細胞の三次元培養にアテロコラーゲンゲルを用いることによって、遺伝子発現および細胞挙動に大きな影響があること、である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
得られた成果に基づいて、複数の学会報告が達成できており、現在原著論文を復数作成する段階になっている。具体的には、『①ヒト関節軟骨細胞に対するメカニカルストレスは, 炎症メディエーター及び疼痛関連因子の産生を促進する』と題してメカニカルストレスを受けたヒト関節軟骨細胞では, IL-1βやTNFαによる刺激経路を介さずにIL-6やPGE2, NGFなどの発現が促進されることが示唆されるデータを獲得し、そのメカニズムを解明することで、OA治療の新知見をめざしている。原著論文の作成を進行中でありまた、microarrayを用いた網羅的解析によって得られた変動遺伝子群・パスウェイ群は、今後の研究発展の重要な基礎となる情報である。 また、『関節軟骨由来細胞の三次元培養において、コラーゲンゲルは細胞増殖・基質分解酵素産生・力学刺激への反応に関与する』と題して、三次元培養におけるartificial ECMが細胞に与える影響についての知見について、学会報告を経て、原著論文を作成中である。成果に関しては、当研究室の実験系を含めての普遍的な現象を捉えた重要なものであり、当研究分野進捗の基礎となると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在継続・計画中の方策は大きく以下の3点である。①細胞を用いた分子メカニズム解析の発展:関節組織由来細胞に加えて、より未分化な細胞を用いた実験を立案・準備中である。これまでに確立された手技(三次元培養・力学刺激・遺伝子解析・分化誘導など)によって、既存のデータとの比較を予定する。再生医療の観点から期待されている細胞から分泌される液性因子に着目した実験を予定している。②関節組織を用いた解析:より生体に近い実験系として、関節組織(骨軟骨組織・半月板組織)の各種培養および力学刺激に対する応答を解析中である。遺伝背景や部位による差異が大きいため、その分類方法(組織学的、遺伝学的)の確立をまず、目指している。その上での外界からの刺激への反応を検討する。従来の手法に加えて、超音波診断装置を導入した新たな手法を検討中である。 ③得られた成果に基づく治療ターゲットの探索:前年度、三次元培養細胞を用いた網羅的遺伝子発現解析を復数行った。その結果の検証にも阻害剤を用いた手法が有用と確認できため、研究計画にも挙げていた阻害剤来ライブラリーを用いたターゲット探索に着手する予定としている。三次元培養細胞を用いて開始して、有望な結果に関しては、関節組織を用いて検討をおこなう。
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