研究課題/領域番号 |
19H03798
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
上田 豊 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (10346215)
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研究分担者 |
中村 隆文 川崎医科大学, 医学部, 教授 (20303969)
笹川 寿之 金沢医科大学, 医学部, 教授 (30272975)
中川 慧 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30650593)
小林 栄仁 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50614773)
榎本 隆之 新潟大学, 医歯学系, 教授 (90283754)
吉野 潔 産業医科大学, 医学部, 教授 (90362730)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 子宮頸がん検診 / コルポスコープ / スマートスコープ / 自動診断 / AI |
研究実績の概要 |
前年度までに、過去のコルポスコープ画像を用いてAI診断システムの開発と精度検証を行った。病理診断に基づき、正常:120症例、CIN1:120症例、CIN2-3:113症例、浸潤癌:110症例をトレーニングとテストに3:1で割り付けて評価を行った。この4つのカテゴリーでは正診率は43.5%、CIN1以下とCIN2以上の2つのカテゴリーでは正診率は72.4%であった。今年度は、このAI自動診断システムを医師が活用して診断することで精度が向上するかどうかを検証した。 正常・CIN1・CIN2-3・浸潤癌の病理診断のついた各20症例ずつを対象とし、最初に医師が通常のコルポスコープで診断をし、ついで、これら病変に対するAI診断の結果を見た上で医師が最終総合診断を下し、その正診率を比較した。正常およびCIN1では、医師の最初のコルポスコープでの診断に比してAI診断を参考にした総合診断による精度の上昇は認められなかったが(正常:64.8%→63.3%、CIN1:54.4%→51.1%)、CIN2-3においては正診率は上昇傾向であった(54.4%→58.0%、p=0.16)。浸潤癌においては、総合診断することで有意な正診率の向上を図ることができた(38.9%→48.5%、p<0.01)。現状のAIの診断は高度前がん病変以上において優れていると考えられた。軽度前がん病変や正常症例における精度の向上が課題として残ることとなった。また、高度前がん病変・浸潤癌の症例においても精度が必ずしも高くないため、更なる症例での教育によりAI診断システムの精度向上も必要と考えられる。 これらデータは、来年度に論文として発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は463症例を各診断で学習用:検証用=3:1になるようにランダムに振り分けてAI診断システムの開発とその評価を行った。今年度は、上記にて開発・評価できたAI診断システムを医師が活用して病変の診断を行うことのメリットを検討した。 正常・CIN1・CIN2-3・浸潤癌の病理診断のついた各20症例ずつを対象とし、最初に医師が通常のコルポスコープで診断をし、ついで、これら病変に対するAI診断の結果を見た上で医師が最終総合診断を下し、その正診率を比較したところ、特にCIN2-3・浸潤癌の症例では診断精度の上昇を確認することができた。 概ね、予想通りの結果である。これまでのところ、研究計画に差しさわりとなる問題は生じていない。
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今後の研究の推進方策 |
子宮頸部のコルポスコープ画像を用いてAI診断システムの開発とその評価を行うことができた。正常・CIN1・CIN2-3・浸潤癌の4つのカテゴリーでは正診率は43.5%、CIN1以下とCIN2以上の2つのカテゴリーでは正診率は72.4%と、必ずしも高い精度ではなかった。しかし、今年度の解析により、このAI自動診断システムを医師が活用して診断することで精度が向上することを証明できた。来年度は、これらデータを整理し、論文として発表する。高度前がん病変・浸潤癌の症例においても精度が必ずしも高くないため、更なる症例での教育によりAI診断システムの精度向上も必要と考えられる。研究期間終了後も研究は継続し、今後は、スマートフォンによる撮影画像を用い、精度を向上させることを検討している。
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