多層的オミックス解析によるＳＪＳ／ＴＥＮの病態把握と予後向上に向けた戦略的研究

2020 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 19H03809
• 研究機関: 京都府立医科大学
• 研究代表者: 外園 千恵 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30216585)
• 研究分担者: 木下 茂 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30116024) ; 上田 真由美 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (60398386)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: Stevens-Johnson症候群 / 中毒性表皮壊死症 / 眼合併症 / エピゲノム解析 / microRNA

研究実績の概要

今年度は、エピゲノム解析として、眼合併症を伴うSJS/TENの眼表面組織、特に結膜上皮を対照に、網羅的microRNA(miRNA)解析を行った。miRNAは、遺伝子発現を後天的に制御することがわかっている。方法としては、眼合併症を伴うSJS/TEN患者(n=3)が眼表面再建術を受ける際に摘出される結膜組織、ならびに、コントロールとしては結膜弛緩症患者(n=3)が結膜切除術を受ける際に摘出される結膜組織を使用した。結膜組織からDispaseを用いて結膜上皮を剥離後、miRNAを抽出し、GeneChip miRNA 4.0 Array (Affymetrix)を用いて網羅的miRNA解析を行った。網羅的miRNA解析の結果、ANOVA p-valueが0.05以下の有意差を示したmiRNAのうち、SJSで5倍以上増加していたのは52 miRNAであった。また、5分の1以下に減少していたのは13 miRNAであった。これらのmiRNAを対象に、再度、眼合併症を伴うSJS/TEN患者結膜組織(n=6)、コントロール結膜組織(n=7)を使用して定量的miRNA解析を行ったところ、has-miR-455-3pとhas-miR-31*が有意に上昇していることが明らかとなった。次に、has-miR-455-3pの機能解析を行った。ヒト結膜上皮に、has-miR-455-3p inhibitorを遺伝子導入して、網羅的遺伝子解析を行ったところ、49遺伝子の発現が有意に亢進しており、139遺伝子の発現が有意に減少していた。そこで、網羅的遺伝子発現解析にて発現が抑制されたトップの遺伝子と、我々が以前の解析で明らかとしていた眼合併症を伴うSJS/TEN患者の結膜組織において有意に上昇していた遺伝子を選択して、定量PCRにてその発現を確認した。その結果、ANKRD1, CXCL8, CXCL2, GEM, PTGS2, RNASE8, IL6, CXCL1, IL1A,KPRP, IL36G, PPP1R3C, ADMが、has-miR-455-3p inhibitor遺伝子導入結膜上皮細胞で有意に抑制されていることを明らかとした。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

フェノーム解析、プロテオーム解析が終了し、エピゲノム解析も眼組織についての分は、終了している。現在、マイクロバイオーム、追加のゲノム解析等を、予定通り進行している。

今後の研究の推進方策

今後は、マイクロバイオーム、追加のゲノム解析等を進めて結果を得る予定である。

研究成果

• [雑誌論文] Oral Mucosal Epithelial Transplantation and Limbal-Rigid Contact Lens: A Therapeutic Modality for the Treatment of Severe Ocular Surface Disorders. (2020)
  • 著者名/発表者名: Sotozono C, Inatomi T, Nakamura T, Ueta M, Imai K, Fukuoka H, Komai S, Ishida G, Kitazawa K, Yokoi N, Koizumi N, Kimura Y, Go M, Fukushima M, Kinoshita S.
  • 雑誌名: Cornea 巻: 39(Suppl 1) ページ: S19-27
  • DOI: 10.1097/ICO.0000000000002566
  • 査読あり
• [雑誌論文] Long-term Progression of Ocular Surface Disease in Stevens-Johnson Syndrome andToxic Epidermal Necrolysis. (2020)
  • 著者名/発表者名: Yoshikawa Y, Ueta M, Fukuoka H, Inatomi T, Yokota I, Teramukai S, Yokoi N, Kinoshita S, Tajiri K, Ikeda T, Sotozono C.
  • 雑誌名: Cornea 巻: 39(6) ページ: 745-753
  • DOI: 10.1097/ICO.0000000000002386
  • 査読あり
• [雑誌論文] Expression of prostaglandin E2 receptor 3 in the eyelid epidermis of patients with Stevens- Johnson syndrome/toxic epidermal necrolysis. (2020)
  • 著者名/発表者名: Mieno H, Ueta M, Yamada K, Yamanaka Y, Nakayama T, Watanabe A, Kinoshita S, Sotozono C.
  • 雑誌名: Br J Ophthalmol. 巻: 104 (7) ページ: 1022-1027
  • DOI: 10.1136/bjophthalmol-2018-313587
  • 査読あり
• [雑誌論文] Respiratory complications of Stevens-Johnson syndrome (SJS): 3 cases of SJS-induced obstructive bronchiolitis. (2020)
  • 著者名/発表者名: Kaneko Y, Seko Y, Sotozono C, Ueta M, Sato S, Shimamoto T, Iwasaku M, Yamada T, Uchino J, Hizawa N, Takayama K.
  • 雑誌名: Allergol Int. 巻: 69(3) ページ: 465-467
  • DOI: 10.1016/j.alit.2020.01.003
  • 査読あり
• [雑誌論文] Clinical trial to evaluate the therapeutic benefits of limbal-supported contact lens wear for ocular sequelae due to Stevens-Johnson syndrome/toxic epidermal necrolysis. (2020)
  • 著者名/発表者名: Itoi M, Ueta M, Ogino K, Sumi E, Imai K, Teramukai S, Kinoshita S, Sotozono C.
  • 雑誌名: Cont Lens Anterior Eye. 巻: 43(6) ページ: 535-542
  • DOI: 10.1016/j.clae.2020.05.007
  • 査読あり
• [雑誌論文] The nationwide epidemiological survey of Stevens-Johnson syndrome and toxic epidermal necrolysis in Japan, 2016-2018 (2020)
  • 著者名/発表者名: Sunaga Y, Kurosawa M, Ochiai H, Watanabe H, Sueki H, Azukizawa H, Asada H, Watanabe Y, Yamaguchi Y, Aihara M, Mizukawa Y, Ohyama M, Hama N, Abe R, Hashizume H, Nakajima S, Nomura T, Kabashima K, Tohyama M, Takahashi H, Mieno H, Ueta M, Sotozono C, Niihara H, Morita E, Kokaze A.
  • 雑誌名: J Dermatol Sci 巻: S0923-1811 (20) ページ: 30298-X
  • DOI: 10.1016/j.jdermsci.2020.09.009
  • 査読あり
• [雑誌論文] Predictive biomarkers for the progression of ocular complications in chronic Stevens-Johnson syndrome and toxic Eeidermal necrolysis. (2020)
  • 著者名/発表者名: Yoshikawa Y, Ueta M, Nishigaki H, Kinoshita S, Ikeda T, Sotozono C.
  • 雑誌名: Sci Rep. 巻: 10(1) ページ: 18922
  • DOI: 10.1038/s41598-020-76064-8
  • 査読あり
• [雑誌論文] Regulation of gene expression by miRNA-455-3p,upregulated in the conjunctival epithelium of patients with Stevens-Johnson syndrome in the chronic stage. (2020)
  • 著者名/発表者名: Ueta M, Nishigaki H, Sotozono C, Yokoi N, Mizushima K, Naito Y, Kinoshita S.
  • 雑誌名: Sci Rep. 巻: 10(1) ページ: 17239
  • DOI: 10.1038/s41598-020-74211-9
  • 査読あり
• [学会発表] 2020年度九州ブロック眼科講習会「皮膚粘膜症候群と眼」. (2020)
  • 著者名/発表者名: 外園千恵
  • 学会等名: 第90回九州眼科学会
  • 招待講演
• [学会発表] 医療機器の医師主導治験の経験と最近の動向について「希少難病に対するコンタクトレンズ開発の経験」 (2020)
  • 著者名/発表者名: 外園千恵
  • 学会等名: 第10回レギュラトリーサイエンス学会学術大会
  • 招待講演
• [学会発表] 角結膜疾患における所見の取り方 (2020)
  • 著者名/発表者名: 外園千恵
  • 学会等名: 第124回日本眼科学会総会
• [学会発表] よく遭遇する小児眼疾患の管理「小児角結膜疾患の診断と治療」 (2020)
  • 著者名/発表者名: 外園千恵
  • 学会等名: 第124回日本眼科学会総会
• [学会発表] 性期に眼合併症を伴うSJS/TEN 患者に対するステロイドパルス療法の効果. (2020)
  • 著者名/発表者名: 三重野洋喜、上田真由美、木下文恵、手良向聡、木下 茂、外園千恵
  • 学会等名: 第124回日本眼科学会総会
• [学会発表] 羊膜移植再手術例の検討 (2020)
  • 著者名/発表者名: 原田康平、日野智之、安久万寿子、石垣理穂、福岡秀記、稗田 牧、稲富 勉、横井則彦、木下 茂、外園千恵
  • 学会等名: 第124回日本眼科学会総会
• [学会発表] ヒト結膜上皮細胞におけるmiR-455-3p の遺伝子発現制御. (2020)
  • 著者名/発表者名: 上田真由美、西垣裕美、外園千恵、横井則彦、木下 茂
  • 学会等名: 第124回日本眼科学会総会
• [学会発表] 慢性期Stevens-Johnson症候群の重症度を反映する涙液中サイトカインの検討. (2020)
  • 著者名/発表者名: 吉川大和、上田真由美、西垣裕美、木下 茂、池田恒彦、外園千恵.
  • 学会等名: 第74回日本臨床眼科学会
• [学会発表] Stevens-Johnson症候群患者における輪部支持型HCL装用前後の涙液中ⅠL-6,ⅠL-8の比較. (2020)
  • 著者名/発表者名: 上田真由美、吉川大和、西垣裕美、木下 茂、外園千恵
  • 学会等名: 第74回日本臨床眼科学会
• [学会発表] 両眼瞼瞼癒着のあるStevens-Johnson症候群の手術タイミングと戦略 (2020)
  • 著者名/発表者名: アジザユリア、原田康平、上田真由美、福岡秀記、木下 茂、外園千恵
  • 学会等名: 角膜カンファランス2021（第45回日本角膜学会総会・第37回日本角膜移植学会）
• [学会発表] 難治性眼表面疾患に対する治療介入が生活の質に及ぼす影響 (2020)
  • 著者名/発表者名: 駒井清太郎、稲富 勉、上田真由美、今井浩二郎、木村泰子、鍵村達夫、木下 茂、外園千恵
  • 学会等名: 角膜カンファランス2021（第45回日本角膜学会総会・第37回日本角膜移植学会）
• [学会発表] Stevens-Johnson症候群の眼表面保菌に関する検討 (2020)
  • 著者名/発表者名: 弓削皓斗、上田真由美、稲富 勉、福岡秀記、木下 茂、外園千恵
  • 学会等名: 角膜カンファランス2021（第45回日本角膜学会総会・第37回日本角膜移植学会）