研究課題/領域番号 |
19H03812
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
館 正弘 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50312004)
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研究分担者 |
菅野 恵美 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (10431595)
川上 和義 東北大学, 医学系研究科, 教授 (10253973)
丹野 寛大 東北大学, 医学系研究科, 助教 (10755664)
高木 尚之 東北大学, 医学系研究科, 助教 (30569471)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 慢性創傷 / C型レクチン受容体 / Dectin-1 / Dectin-2 / 好中球 |
研究実績の概要 |
本課題において申請者らは、褥瘡など慢性創傷における炎症遷延へのC型レクチン受容体(CLRs)の関与を解明し、「アクセル・ブレーキ理論を応用した免疫療法」の確立を目的としている。 今回我々はCLRsのうちDectin-1とDectin-2に注目した。Dectin-1とDectin-2は免疫細胞の細胞膜上に発現するパターン認識受容体であり、真菌の細胞壁由来の糖鎖認識に関わる。 本年度、以下が明らかになった。①Dectin-1発現は創傷作成6時間後に発現のピークを迎え、その後速やかに低下するのに対し、Dectin-2は12時間後にピークを迎え7日目まで中等度の発現が維持された。②Dectin-1、Dectin-2ともに創部に集積した好中球、マクロファージ、線維芽細胞における発現を免疫染色、フローサイトメトリーで確認した。③Dectin-1遺伝子欠損(KO)マウスとDectin-2KOマウスに創傷を作成し治癒過程を比較した。Dectin-1KOマウスでは野生型(WT)マウス、Dectin-2KOマウスと比較し、創閉鎖率、再上皮化率の低下、血管内皮細胞のマーカーCD31の減少、早期に創部に集積する好中球数の減少を認めた。一方、Dectin-2KOマウスではいずれの指標も有意に高かった。④創傷作成後、創部にDectin-1リガンドdZymosan、Dectin-2リガンドmannanを投与したところ、dZymosan群ではVehicle群、mannan群と比較し、創閉鎖率、再上皮化率の促進、CD31の増加、早期に創部に集積する好中球数の増加を認めた。一方mannan群では、いずれの指標も有意に低く、創部への好中球遷延を認めた。 以上のことから、創傷治癒においてDectin-1と2は相反する役割を有する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題において申請者らは、褥瘡など慢性創傷における炎症遷延へのC型レクチン受容体(CLRs)の関与を解明し、「アクセル・ブレーキ理論を応用した免疫療法」の確立を目的としている。 CLRsのうち、Dectin-1とDectin-2にフォーカスして解析を行ったところ、Dectin-1は創傷治癒促進に、Dectin-2は創傷治癒遅延に働く可能性が示された。従って、我々が仮説として立てたアクセル・ブレーキ理論の主軸を担う二つの受容体を同定できたことから、おおむね順調に進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまで我々は、Dectin-1、Dectin-2に認識され、これらの受容体を活性化する物質として、外因性(真菌由来)のdZymosan(β-グルカンを含む)とα-マンナンを用いて解析を行ってきた。熱傷などの創部からは約25%から真菌が分離されるとの報告があり、これらの解析も真菌感染創を反映した有意義な結果であると考える。 一方、Dectin-1とDectin-2は、内因性(損傷した細胞由来)のビメンチン、β-グルクロニダーゼと各々結合することが他の研究者らのin vitroの実験から解明されている。従って、今後は、宿主由来の内因性リガンドとDectin-1、Dectin-2の関与について解析を進めたい。 またその一方で、Dectin-1とDectin-2が創傷に対してなぜ相反する影響を与えるか、シグナル伝達等を含め、そのメカニズムについても明らかにしたい。
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