研究課題/領域番号 |
19H03816
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
田中 里佳 順天堂大学, 医学部, 教授 (70509827)
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研究分担者 |
水野 博司 順天堂大学, 医学部, 教授 (80343606)
西貝 燕 順天堂大学, 医学部, 博士研究員 (80614007)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 血管再生 / マクロファージ / 糖尿病 / 再生医療 / 細胞治療 / 創傷治癒 / 末梢血単核球 |
研究実績の概要 |
申請者は、難治性潰瘍患者の末梢血のマクロファージをin vitroで機能強化・細胞増幅する技術を開発した。興味深いことに本培養から得られる細胞中に血管再生の治療効果と正の相関がある特徴的なマクロファージを見出した。そして本細胞をReMa(Regenerative Macrophage)細胞と名付けた。本研究では、2年間で申請者が独自に発見した本細胞の細胞学的特性と血管再生機構の解明を行った。実験方法としては、ボランティアの健常人と糖尿病患者末梢血から単核球を分離し、独自で開発した生体外培養法を用いてReMaを作成した。そしてReMa細胞の細胞表面抗原(CDX)を同定し、本細胞の細胞生物学的特性をTube formation assay, EPC culture assay, Colony forming assay, Adhesion Assay, Chemotaxis assay, qPCRを用いて解析しCDX陽性細胞であるReMa細胞は高い血管再生、血管新生、内皮細胞遊走能、血管形成能を有していることが明らかになった。このCDXの重要性を確認するため、CDXを阻害したReMa細胞を解析した結果、ReMa細胞の血管再生能のすべてが阻害された。さらに、ReMa細胞を用いた新しい血管再生治療の基盤を構築するため下肢虚血モデルを用いてReMa細胞の血管再生能を検証した結果、ReMa細胞は虚血組織内においても高い血管再生能を有することが明らかになった。以上の結果よりReMa細胞は「血管再生マクロファージ」としての細胞生物学的特性があり、CDXの発現を失った細胞はその性質が喪失することを証明した。本研究成果は、現行の細胞移植治療以上の効果をもたらす新規治療法の開発革新的血管再生治療法に向けた基盤研究となり、今後開発される虚血性疾患の新規治療に大いに貢献したと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、COVID19の影響で血液ボランティアの確保が困難であった時期があり実験は一時中断となったが、COVID19が落ち着いてきてからは、本期間予定していたReMa細胞を用いた新しい血管再生治療の基盤を構築する実験が実施できた。具体的には、①健常マウス下肢虚血モデルにおけるReMa細胞の血流改善効果の検証であり、健常、糖尿病患者末梢血ReMa 、Non-Rema細胞を単離し、ヌードマウス下肢虚血モデルに移植し、ドップラー検査における下肢血流改善効果、免疫組織学的解析による血管新生(CD31染色)、炎症(iNos, Arg染色)、抗線維化効果(Azan染色)を検証した。次に②糖尿病マウス下肢虚血モデルにおけるReMa細胞の血流改善効果の検証をした。レプチンの影響を受けないI型糖尿病ヌードマウス下肢虚血モデルにReMa細胞を移植し、糖尿病環境下におけるReMa細胞の血流改善、血管新生効果を①と同様に検証し予想通りの結果が得られている。2021度は主に血管再生マクロファージ(ReMa細胞)への運命決定因子を解明した。Single Cell Auto Prep System とRNA Seqを用いてsingle cellレベルでの遺伝子発現の特性を解析しReMa細胞に特異的な遺伝子群の候補を選出した。本研究は理化学研究所と共同研究を開始して実験を行った。糖尿病患者由来ReMa細胞も同様に解析し、疾患特異的因子の候補を選出した。
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今後の研究の推進方策 |
2019年から2021年度の研究成果は、本細胞の性質・機能の解明に繋がり、今まで発見されたことのない新規血管再生マクロファージを明らかにした。2022年度は論文化を行い、その後は本研究成果をもとに実用化研究へとつなげ、血管再生医学の発展につながると考える。
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