研究課題/領域番号 |
19H03817
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
滝川 正春 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (20112063)
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研究分担者 |
青山 絵理子 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (10432650)
星島 光博 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (30736567)
久保田 聡 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (90221936)
西田 崇 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (30322233)
江口 傑徳 岡山大学, 医歯薬学域, 講師 (20457229)
大野 充昭 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (60613156)
鈴木 守 大阪大学, 蛋白質研究所, 准教授 (40280507)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CCNタンパク質 / CCNファミリー / 細胞内機能 / 核移行 / イントラクリン / 細胞外情報ネットワーク / 細胞外ベジクル / 軟骨細胞 |
研究実績の概要 |
1.CCNタンパク質の意外な新機能(細胞内機能):CCN2はN末にシグナルペプチド(SP)を有する分泌性タンパク質であるが、その分子内に塩基性アミノ酸に富んだ核移行シグナル様の配列を持ち、核内タンパク質として機能する可能性が考えられる。そこで、SPを除いたCcn2および全長Ccn2を組み込んだCCN2発現プラスミドをNIH3T3細胞に遺伝子導入し、CCN2の核移行を調べたところ、SPの有無に関わらず、CCN2が線維芽細胞の核内に移行することを見いだした。また、核内に移行したCCN2は、YAPと結合し、CCN2のプロモーター上、あるいは線維症に関連するPU.1のプロモーター上に結合し、CCN2やPU.1の発現を亢進させ、筋線維芽細胞のマーカーであるαSMAの遺伝子発現レベルを亢進させた。これらの結果は、従来の線維症発症おけるCCN2の作用は、オートクリン・パラクリン作用とされてきたが、イントラクリン作用も関与していることを示唆している。 2.CCNタンパク質の細胞外新情報ネットワーク:CCN1,CCN2,CCN3が前立腺がん細胞株PC-3細胞の培養上清から分離した細胞外ベシクル(EV)にこの量的順序で存在すること、CCN4-6は存在しないことを、LC-MS/MSを使ったプロテオーム解析で明らかにした。また、ヒト軟骨細胞株HCS-2/8の培養上清を用いて、全長CCN2がEVに搭載されて遠隔組織に運ばれ、MMPにより切断され、EVからCCN2フラグメントが遊離して作用する新情報ネットワークの存在を示唆した。 3.構造ー機能解析に関しては、CCN2とCDMP1/GDF-5が結合することを見いだした。立体構造解析については、CCN2の結晶化には未だ至っていない。 これらの代表例を含めCCN関連で、学術論文3報を出版し、10報をin press, 編著本1冊をin pressとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CCNタンパク質の意外な新機能(細胞内機能)については、R2年度にCCN2が細胞内小胞輸送に関与するという意外な新機能を見いだし論文として報告し、R3年度にはその関連の論文も発表した。また、R3年度はCCN2が核移行してイントラクリン因子として働くというまた別の細胞内新機能を見いだし、これがCCN2の線維化促進作用の一端を担っている可能性を示した。この発見は、CCN2の作用メカニズムに関して新たな展開をもたらす知見であり、今後のこの方面の研究の発展が期待される。 CCNタンパク質の新情報ネットワークに関しては、すでに細胞外ベジクル(EV)にCCN2が搭載され、血流を介して遠隔組織に運ばれて一部はMMPにより分断されそのフラグメントが機能を発揮するとの新情報ネットワークを一連の4報の論文で提唱するにいたった。 構造ー機能解析に関しては、軟骨のBMPとも言われるCDMP1/GDF-5がCCN2と結合することを見いだした。立体構造解析については、CCN2の結晶化には未だ至っていないのでクライオ電顕など別のアプローチを検討中である。 いずれにしても、R3年度は上記の代表例を含めCCN関連で、学術論文3報を出版し、10報をin press, 編著本1冊をin pressとしたので、総合して判断すると、順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
1) CCNタンパク質の細胞内機能については、CCN2が細胞内小胞輸送に関与するという意外な新機能を見いだし論文発表済みであるが、昨年度はCCN2が核移行してイントラクリン因子として働くというまた別の細胞内新機能を見いだした。即ち、CCN2がYAPと結合し、CCN2プロモーター上、あるいは線維症に関連するPU.1のプロモーター上に結合し、CCN2やPU.1の発現を亢進させ、筋線維芽細胞のマーカーであるalphaSMAの遺伝子発現レベルを亢進させ、その結果、未分化間葉系細胞の筋線維芽細胞への分化が促進され、線維化促進に繋がるという可能性が示唆された。そこで、今後はこれらの結果を再確認し、また、CCN2の核移行シグナルが分子内の如何なるアミノ酸配列によるのかなどを解明し、論文発表へと繋げる。また、CCN2やCCN3以外の他のCCNタンパク質の新機能について、特に、CCN6が破骨細胞形成を阻害する現象を見いだしていたが、そのメカニズムとしてCCN2がRANKLに結合することによる知見を得ており、その詳細について解明する。 2) CCNタンパク質の新情報ネットワーク、即ち細胞外ベジクル(EV)に搭載されてCCNsが遠隔臓器に到達してそこで作用をするという作用機構に関しては、すでにR2年度に2報の論文を発表し、R3年度もまた2報の論文をin pressにまで持って行った。従って、すでに、このサブテーマでは一定以上の成果を挙げている。今後はさらに対象とする遠隔臓器を拡げる予定である。 3) 構造ー機能解析については、軟骨由来のBMPとされるCDMP1/GDF-5とCCN2とが結合することを見いだしているのでその結合ドメインを解明すると共に、その結合の生理的意義を解明する。立体構造解析については、CCN2の結晶化が難航しており、今後はクライオ電顕など別のアプローチを試みる。
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