研究課題/領域番号 |
19H03820
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
上條 竜太郎 昭和大学, 歯学部, 教授 (70233939)
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研究分担者 |
赤池 孝章 東北大学, 医学系研究科, 教授 (20231798)
宮本 洋一 昭和大学, 歯学部, 准教授 (20295132)
齋藤 琢 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30456107)
山田 篤 昭和大学, 歯学部, 講師 (50407558)
片桐 岳信 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (80245802)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 活性イオウ分子種 / 骨代謝 / 成長板 / エネルギー代謝 |
研究実績の概要 |
骨代謝における活性イオウ分子種の役割を解明することを目的として研究を行っている。本年度は主に、骨成長における活性イオウ分子種の役割を解析した。長管骨の伸長は、骨端部の成長板軟骨で起こる。成長板軟骨は血管に乏しく、軟骨細胞は低酸素環境で増殖している。低酸素環境にある軟骨細胞のミトコンドリアは酸素が十分に供給される細胞と同様に機能しているのか未だ不明である。近年、研究分担者の赤池らは、哺乳類の細胞にも酸素の代わりにイオウを電子の授受に用いるイオウ呼吸が存在することを報告した。イオウ呼吸では電子供与体として硫化水素を使用し、電子受容体としてシステイン・パースルフィドなどの活性イオウ分子種を用いてATP産生を行うと考えられている。そこで本年度、我々はマウス胎児脛骨を採取し、硫化水素発生剤として硫化水素ナトリウムを添加し器官培養を行った。また、システイン・パースルフィド合成酵素(CARS2)の基質システインの細胞内濃度を高めるために、脛骨培養系にシスチンを添加した。脛骨の伸長は、硫化水素ナトリウムおよびシスチンによって有意に促進されることを見出した。また、培養後の脛骨の組織切片を作製したところ、硫化水素ナトリウムによって成長板軟骨の増殖軟骨細胞層の増大が観察された。マウス初代培養軟骨細胞を硫化水素ナトリウムおよびシスチン存在下に培養したところ、細胞数が有意に増加した。野生型マウスおよびCARS2遺伝子ヘテロ欠損マウスの脛骨を嫌気的な条件下に培養したところ、野生型マウスの脛骨の伸長はシスチンの添加により促進されたのに対し、CARS2ヘテロ欠損マウスの鶏骨の伸長は促進されなかった。これらの結果から、骨の伸長は成長板軟骨細胞のイオウ呼吸により正に制御されていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低酸素環境下にある成長板などの軟骨組織におけるエネルギー代謝は大きな謎である。我々の実験結果は、低酸素環境下の軟骨細胞が、増殖に必要なエネルギーをイオウ呼吸によって得ていることを示唆するもので、骨軟骨代謝研究の分野で極めて重要な発見といえる。
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今後の研究の推進方策 |
骨の形成・成長に関する研究としては、イオウ呼吸に基づいた軟骨細胞の増殖と骨成長の機序についてさらに解析を進める。また、成長した骨のリモデリングにおける活性イオウ分子種の役割の解析も進める。そのために、骨吸収を担う破骨細胞の分化過程にける活性イオウ分子種の機能を解析する予定である。
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