研究課題/領域番号 |
19H03829
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
多部田 康一 新潟大学, 医歯学系, 教授 (20401763)
|
研究分担者 |
谷口 正之 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00163634)
野中 由香莉 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40710520)
寺尾 豊 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50397717)
藤本 啓二 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70229045)
高橋 直紀 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (80722842)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 歯周病原細菌 / バイオフィルム / ペプチド医薬 / アミノ酸置換 |
研究実績の概要 |
コメ由来のAmyⅠ-1-18ペプチドおよびそのアミノ酸置換体は浮遊状態のPorphyromonas gingivalisに抗菌活性を示す(Taniguchi M et.al., Biopolymers, 2015)。しかし,これらのペプチドがバイオフィルムを制御し,歯周病治療に有効であるかどうかは明らかではない。そこで,本年度は,AmyⅠ-1-18および同ペプチドのアミノ酸置換体G12Rが歯周病原細菌のバイオフィルムに及ぼす影響について解析した。 まず初めに,代表的な歯周病原細菌であるP. gingivalisおよびFusobacterium nucleatumの培養液に,これらのペプチドを添加し,バイオフィルム量をクリスタルバイオレット染色にて評価した。その結果,両ペプチドはP. gingivalisおよびF. nucleatumのバイオフィルム形成を阻害した。また,AmyⅠ-1-18と比較してG12Rは,両菌株に対し,より低濃度でバイオフィルム形成を阻害した。 次に,これらのペプチドの抗菌メカニズムを明らかとするため,MICおよびMBCを測定すると,AmyⅠ-1-18ペプチドはP. gingivalisに対して静菌的に,F. nucleatumに対しては殺菌的に作用することが示された。一方,G12Rはいずれの菌に対しても,AmyⅠ-1-18ペプチドよりも強力な殺菌的作用を示した。また,propidium iodide染色を用いて,各ペプチドによる細胞膜傷害性を調べたところ,G12R投与群では,膜透過性の亢進が示唆された。 以上より,AmyⅠ-1-18およびG12Rペプチドは,歯周病原細菌のバイオフィルム形成を阻害した。アミノ酸置換体であるG12Rは歯周病原細菌に対する細胞膜傷害能の強化により,強い殺菌作用を示すことが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に沿って,コメ由来のペプチド素材のスクリーニングを行い,特に上記の2種類を含むペプチドの選定を行った。その上で,バイオフィルムへ及ぼす影響について検証を行い,これらのペプチドが歯周病原細菌のバイオフィルム形成阻害作用を有することが明らかとなった。上記の結果から,これらのペプチドが,既存の抗菌薬に代わる新たな歯周病治療薬として応用しうる可能性が示唆された。またアミノ酸置換によりペプチドの抗菌活性が強化されることが明らかとなった。電荷などのペプチドの性質の変化が抗菌活性に影響を及ぼしたと考えられ,今後更にペプチドの性質と菌に対する特異性について検証を行うことによって,より細菌特異的な抗菌薬の開発につながる発展性を有することが示唆された。 これらの実験は概ね計画通りに実行され,コメ由来ペプチド群については,抗菌活性において一定の成果が得られたものと考えている。今後は,他に計画していた大豆由来ペプチドについても同様の検討を予定している。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度成果の得られたコメ由来ペプチドに引き続き、次年度は,特に大豆ペプチド群に着目し,各ペプチドの機能について以下の検討を計画している。特に抗菌活性について解析を行い、臨床応用可能なペプチドの選定を目指す。 ①抗菌活性の解析 大豆ペプチドの歯周病原細菌への抗菌活性について評価を行う。代表的な歯周病原細菌である,Porphyromonas gingivalis, Fusobacterium nucleatumに対するMIC,MBCの評価を行う。さらに,常在細菌への影響も合わせて検討する。大豆ペプチドの抗菌メカニズムについて,膜障害性,クオラムセンシング,病原因子発現阻害機能を検証する。単菌または複数の菌種からなるバイオフィルムモデルを使用し,大豆ペプチドのバイオフィルム形成阻害作用および成熟バイオフィルム除去作用について評価する。評価方法としてはクリスタルバイオレット染色またはATP Assayを用いる。さらに,3次元バイオフィルムアッセイにより,SYTO9およびPI染色によるバイオフィルム形成阻害もしくはバイオフィルムへの浸透効果について共焦点顕微鏡により評価する。 ②細胞為害性の解析 上皮系および単球系培養細胞を用い,大豆ペプチドの細胞為害性についてMTT Assayにて評価する。
|