研究課題
本申請研究では、象牙芽細胞の細胞膜センサータンパク質活性化シグナル因子、歯髄幹細胞から象牙芽細胞への分化シグナル因子と、これらの標的受容体を同定し、象牙質再生を制御する細胞内・外シグナルネットワークを明らかにしている。得られた知見から、象牙芽細胞の細胞膜センサータンパク質活性化シグナルと象牙芽細胞分化の制御シグナルを基盤とした象牙質再生分子創薬を確立する。初年度には以下の知見が得られた。1)ヒト象牙芽細胞に存在する細胞膜センサータンパク質である特定の受容体に作用し、生体への安全性が高く、かつ加速的に石灰化を誘導する物質を見出した。この物質の特定の化学構造が極めて高い象牙質形成能を有していた。現在、この物質について特許出願を検討している。2)薬剤投与で象牙芽細胞の死滅を誘導できるType 1 (2.3kp) - collagen Cre/flox-stop-flox-difteria toxin receptor(DTR)マウスを構築した。Difteria toxinで象牙芽細胞死を生じさせたマウスで、疼痛行動実験を行い侵害受容スコアを測定したところ、象牙質感覚の消失が見出された。3)Dmp1-T2A-Creマウスを用いた象牙芽細胞分化と誘導された象牙芽細胞の機能評価を行うために作出したマウスの評価を行った。また骨形成系細胞におけるアルカリホスファターゼの新機能を発見した。4)材料工学的指標を用いた硬組織の解析および超高精度画像解析で、硬組織の定量評価を行った。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究では、象牙芽細胞の機能と分化を制御するマルチシグナルネットワークに対して直接的な作用を有し、第3象牙質形成にとって最も適切な組織応答を促進する革新的な次世代型薬剤の創出を行う。初年度における進捗状況は、十分であり、以下の通りである。1)ヒト象牙芽細胞の細胞膜センサー受容体を活性化させることで、象牙質形成を促進させる物質をin Vitroで同定し、十分な進捗が得られた。現在、この物質について特許出願を検討している。2)DTRマウスを用いた実験で、象牙芽細胞が象牙質の感覚受容細胞である事が確かめられた。本マウスを用いた象牙芽細胞の枯渇実験系では、臼歯における枯渇を確認済みであったが、ヘマトキシリン・エオジン染色により、切歯でも象牙芽細胞が枯渇していることを確認できた。3)Dmp1-T2A-Creマウスの2Aシステムが生体レベルで正常に機能し、硬組織細胞特異的にCreが発現している事を確認した。またアルカリホスファターゼが骨形成系細胞の分化を促進する事を見出した。4)骨質解析は順調に進められており、画像解析は定量評価指標を慎重に定めているところである。
今後の象牙質再生次世代型薬剤の創出のために、以下の研究を推進したい。しかしながら、猛威を振るうCovid-19の影響は無視できないことを付記しておきたい。1)細胞膜センサータンパク質に作用し石灰化を誘導する物質を実験的形成窩洞に投与し、その薬理作用の濃度・時間依存性を検討する。2)加えて、これら物質が作用することで構成される象牙質石灰化前線の特殊な環境維持に働く細胞内外シグナルを検討したい。3)申請調書に記載はないが、DTRマウスを用いた実験で、象牙芽細胞が感覚受容細胞であることが見出された。そこで、感覚受容細胞としての象牙芽細胞機能で誘発される象牙質形成を検討したい。4)Dmp1-T2A-Cremマウスとテスターマウスを交配し、培養細胞レベルの象牙芽細胞分化誘導系の確立を試みるとともに、アルカリホスファターゼによる骨形成細胞分化誘導メカニズムの解明を試みたい。
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