研究課題/領域番号 |
19H03834
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
犬塚 博之 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (20335863)
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研究分担者 |
福本 敏 九州大学, 歯学研究院, 教授 (30264253)
清水 康平 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (70727073)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 炎症 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
本研究は細胞内脂質代謝関連タンパク質Lipinを介した炎症メディエーター産生調節分子機序の解明を目的としている。初年度は抗炎症タンパク質としての機能が明らかとなりつつあるLipin2の活性制御機構解明の一環として、Lipin2タンパク質安定性調節分子メカニズムを解析した。Lipin2分解を促進する分子として着目したSCF E3 ユビキチンリガーゼをゲノム編集によりマクロファージでノックアウトしてLipin2タンパク質安定性を調べた結果、Lipin2タンパク質の安定化が観察された。さらにLipin2とE3の間の相互作用を評価するため、Lipin2アミノ酸配列内のE3結合配列を同定し、結合部位に変異を導入した Lipin2変異体を作製して免疫沈降による相互作用解析とタンパク質半減期測定実験を行った。解析の結果、結合配列欠失型Lipin2においてE3との結合が消失し、Lipin2はタンパク質分解を受けず安定化することが確認された。次に、マクロファージ活性化におけるLipin2タンパク質分解の意義を明らかとするため、E3リガーゼ阻害剤でマクロファージを処理し炎症促進サイトカインIl1betaの発現を測定した結果、阻害剤処理細胞においてその発現が有意に抑制された。さらに阻害剤処理細胞でLipin2タンパク質の安定化もあわせて確認された。E3リガーゼノックアウト細胞でも同様の結果が得られたことから、SCF E3リガーゼに依存的なLipin2の分解はマクロファージの炎症応答を促進することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究実施計画に掲げたLipin2分解調節分子メカニズム同定に係る実験はほぼ終了し、さらにLipin2経路が抗炎症療法の標的となることを示唆する結果を得ることが出来た。以上の理由により、現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度はマクロファージ活性化とLipin2生理機能の相関に焦点を当て解析を行う。ゲノム編集によりLipin2ノックアウトマクロファージ細胞株を作製し、LPS刺激後のコントロール・ノックアウト両細胞をマイクロアレイ解析に供する。発現差異遺伝子群の同定とGene Ontology解析により、Lipin2を介して活性化もしくは抑制を受けるシグナル伝達経路を抽出する。さらに、プロテオミクス解析によりLipin2と相互作用するタンパク質を網羅的に同定し、検出されたタンパク質のリストの中から炎症関連因子を選定し、両者の相互作用の生理学的な意義について生化学的手法を用いて詳細に解析する。得られた知見から炎症シグナル伝達経路における抗炎症療法のための候補標的分子を絞り込み、薬理学的解析により炎症抑制作用を評価する。
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