研究課題
本研究は細胞内脂質代謝調節タンパク質Lipinを介したマクロファージにおける炎症制御分子機構の解明を目的としている。初年度は、抗炎症タンパク質としての機能が近年報告されているLipin2の分子活性調節機序同定の一環として、Lipin2タンパク質分解メカニズムの一端を明らかとした。本研究の背景として、Lipin2をコードする遺伝子の異常がマジード症候群と呼ばれる骨融解を伴う骨髄炎の発症につながることが報告されていることから、令和2年度はLipin2の機能とマクロファージにおける炎症・破骨細胞形成シグナルとの相関に着目し解析を行った。Lipin2ノックアウト細胞株をリポ多糖(LPS)で刺激し、コントロール細胞との比較によりLipin2機能欠損がLPS依存的な炎症シグナルの細胞内伝達経路にどのような影響を及ぼすか解析した。さらにLipin2の欠損がRANKL依存的な破骨細胞形成を促進するか観察し、以下の点を明らかとした。(1) Lipin2はLPS刺激に応答する炎症反応関連遺伝子群の発現を負に調節する。(2) Lipin2はTLR4下流NFkappaBならびにMAPキナーゼ両経路のLPS依存的な活性化を抑制する。(3) Lipin2ノックアウトによりRANKL依存的な破骨細胞様細胞への分化が促進される。(4) Lipin2はNFATc1活性化を抑制する。以上よりLipin2の、抗炎症ならびに骨吸収抑制に関連した分子機能の一端を明らかにすることができた。これらの知見から、Lipin2の機能喪失に伴い発症する骨髄炎に対する治療法開発の可能性が示唆された。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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