研究課題/領域番号 |
19H03836
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
波多 賢二 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (80444496)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | DNAメチル化 / 骨芽細胞 |
研究実績の概要 |
令和元年度は骨芽細胞における特異的なDNAメチル化領域およびその制御を受ける遺伝子を特定するために、MBD-seqを行った。生後3日齢のICRマウスより初代培養骨芽細胞を採取し、コントロールとして新生仔OCRマウスの皮膚線維芽細胞ならびに肋軟骨細胞を採取した。それぞれの細胞からゲノムDNAを精製し平均長が200bpになるように断片化を行ったのち、MBD2タンパク質のメチル化CpG結合ドメインを用いて、メチル化されたDNA断片を濃縮生成し、次世代シークエンスを用いてゲノムワイドなDNAメチル化解析を行った。その結果、骨芽細胞のゲノムDNAメチル化領域として約260000カ所を同定した。つぎに、遺伝子発現に深く関与するプロモーター領域のCpGアイランドのDNAメチル化レベルを検討するためにBALM(a bi-asymetric-Laplace model)を用いた解析を行った。その結果、3732カ所のプロモータCpGメチル化領域を見出した。これら、3732カ所のDNAメチル化領域のなかで、骨芽細胞特異的なメチル化領域を探索するために、軟骨細胞および皮膚線維芽細胞においてもMBD-seqならびにBALMによるメチル化レベルの解析をおこない、統合解析を行った。その結果、骨芽細胞特異的なDNAメチル化領域を1305カ所同定することに成功した。 CpGメチル化レベルは遺伝子発現を負に制御することから、骨芽細胞、軟骨細胞および皮膚繊維芽細胞からRNAを抽出しRNA-seqを行い、骨芽細胞で特異的に発現が低下している遺伝子についても解析を行い、DNAメチル化が亢進しなおかつ遺伝子発現が低下している骨芽細胞特異的な遺伝子のクローニングに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次世代シークエンサーを用いたエピジェネティク解析が成功し、骨芽細胞特異的なDNAメチル化遺伝子とそのメカニズムの解明に成功している。MBD-seqは技術的にも困難な実験であるが、サンプル回収およびデータ解析を終えることができたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題として、以下の実験を予定している ①骨形成におけるDNAメチル化機構の解明:令和元年度エピジェネティック解析の結果を基盤として、骨芽細胞分化におけるDNAメチル化機構の解明を行う。具体的には、骨芽細胞分化におけるDNAメチル基転移酵素の同定とその標的遺伝子の解明、さらにはDNAメチル化遺伝子の骨芽細胞分化における機能的役割の解明を目指す。 ②DNAメチル化阻害剤の効果の検討:DNAメチル化を制御することで骨形成の効率を上げるためには、DNAメチル化阻害剤を用いることが効率的である。そこで、生体内における解析動物実験モデルの予備実験として、骨芽細胞分化に対する様々なDNAメチル化阻害剤の効果を検討しDNAメチル化阻害剤を網羅的に選別する。具体的には、未分化間葉系細胞および皮膚線維芽細胞を現在入手可能なすべてのDNAメチル化阻害剤(Abcam社、17種類)で処理し、骨芽細胞分化培地で培養する。その後Alp染色、Von Kossa染色さらにRT-qPCR法で骨芽細胞分化マーカーを評価し、最も骨芽細胞分化誘導能の高いDNAメチル化阻害剤をスクリーニングする。そして、同定されたDNAメチル化阻害剤が制御する遺伝子およびゲノムDNA領域をRNA-seqおよびMBD-seqにより解析することで、メカニズムに立脚した骨再生法の確立を目指す。 骨芽細胞で計画通りに進まない場合は、軟骨組織形成における役割についても検討する。骨芽細胞のコントロールとして用いた軟骨細胞のDNAメチル化データおよび実験結果を骨芽細胞分化に応用して、研究の円滑な推進に役立てる。
|