研究課題/領域番号 |
19H03837
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
松本 卓也 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (40324793)
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研究分担者 |
山本 雅哉 東北大学, 工学研究科, 教授 (10332735)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 骨オルガノイド / 骨質制御 / 時間空間制御 / ナノフラグメント |
研究実績の概要 |
近年オルガノジェネシス研究が盛んとなり、骨オルガノイド形成の報告も増えている。このような中、骨オルガノイドの実用性を高める観点から骨オルガノイドの「形成時間の短縮」と「生成物の物性制御」を達成することは重要である。本研究では(a)実際の骨組織発生過程を材料 学的観点で再検討し、(b)得られた結果を元に物理的、化学的人工環境をin vitroにて再現、構築する。また(c)この構築環境を利用した骨 オルガノイド形成のコントロール、といったそれぞれの目的を段階的に達成し、最終的な骨オルガノイドの形成時間短縮と生成物の物性制御を目指す。今年度は特に、迅速な骨組織作製を目的に検討を進めている。具体的には細胞ナノフラグメントの作製方法の最適化を行っている。まず、細胞種、次に細胞構成成分、次に細胞粉砕方法について検討を進め、それぞれ、軟骨細胞、全細胞、超音波処理時間3分以上、という最適化が可能となった。これら結果について、論文ならびに学会での発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は骨オルガノイドなど骨様物質の作製環境の制御により、骨生成期間を短縮させること、ならびに生成骨の物性制御を達成させることである。昨年度は、この目的達成に向け、以下の取り組みを行った。 これまでの我々の研究で細胞を断片化させたナノフラグメントが高い石灰化誘導能を有することが分かっている。そこで、異なる細胞種による石灰化誘導能の違いについて検討した。使用した細胞は、軟骨細胞、骨芽細胞、線維芽細胞の3種類である。その結果、軟骨細胞の利用がもっとも高い石灰化誘導能を示すことが明らかとなった。また、細胞全体、および超高速遠心分離を利用し、細胞膜成分、核成分、細胞質成分に分類し、それぞれの石灰化誘導能についても検討し、全細胞の粉砕物がもっとも高い石灰化誘導能を示すことが明らかとなった。次に、細胞粉砕時間と石灰化誘導能との関係について検討した。その結果、超音波粉砕3分以上により作製したナノフラグメントが高い石灰化誘導能を示すことが明らかとなった。このようにナノフラグメント精製方法の最適化を進め、迅速骨化を誘導する基盤材料の調整が可能となった。また、超高速カメラの利用によりこれら石灰化過程の新たな評価方法も確立されてきている。
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今後の研究の推進方策 |
これらナノフラグメントを用いた石灰化は基本的に24時間程度での石灰化誘導が可能である。そこで、現在、これらナノフラグメントを混在させた細胞スフェロイドを作製し、細胞共存化での石灰化促進化について検討を始めている。実際には添加するナノフラグメント量、細胞数などの微妙な調整が必要である。また、この場合、作製スフェロイドのサイズにも依存することから、様々な条件について検討を進めていく。また、生成骨スフェロイドの物性制御を目指し、特に魚類肋骨の構造に着目し、その発生過程での細胞、物質の機能的、形態的変化について検討を始めた。特に骨基質配向、骨細胞配向について、定性的、定量的評価を進めるとともに、その配向のメカニズムについて実験室でのモデルシステムを構築しその再現を目指す予定である。
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