研究課題/領域番号 |
19H03840
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
江草 宏 東北大学, 歯学研究科, 教授 (30379078)
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研究分担者 |
新部 邦透 東北大学, 大学病院, 助教 (50468500)
山田 将博 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (90549982)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | iPS細胞 / オルガノイド / 骨 / 軟骨 |
研究実績の概要 |
近年、臓器レベルの細胞機能を試験管内で微小環境を忠実に模倣して再現する技術である、“生体機能チップ(Organ-on-a-chip)”が注目されている。一方、iPS細胞はその多能性のため、理論上あらゆる組織の再構築が可能である。研究代表者は、これまでiPS細胞を用いた骨のバイオエンジニアリングに取り組んできた経験から、iPS細胞技術を利用して骨あるいは軟骨のオルガノイドを作製し、これを“骨/軟骨機能チップ”の開発に用いることで、個人差を分子生物学的に検出するツールに資することを着想した。本研究の目的は、iPS細胞に,生体組織の微小環境を疑似した骨/軟骨オルガノイド培養系を用いることで、“骨/軟骨機能チップ”として骨/軟骨の生理学性を試験管内に再現し、これを術前診断に活用する基盤技術として確立することである。初年度は、マウスiPS細胞を特定のサイズのマイクロ空間で3次元培養することで、類骨を豊富に含む骨様組織を作製することが可能であることを見出した。また、ヒトiPS細胞に骨の発生過程を模して段階的に誘導する方法を用いることで、効率的に骨芽細胞塊を作製することに成功した。一方、マウスiPS細胞をマイクロ空間で培養することにより細胞凝集塊を形成させ、これに振盪培養を応用することで軟骨様のオルガノイドの作製に成功し、試験管内で骨/軟骨複合体を導く技術を見出した。さらに今年度は、振盪培養を用いてマウスiPS細胞から軟骨様オルガノイドを作製する技術について詳細を解析し、振盪刺激がTGF-β発現およびWintシグナル伝達を制御することによってiPS細胞から3次元的な軟骨細胞塊への分化誘導が促進されることを明らかにした。今後、これらの技術を用い、骨/軟骨機能チップチップの作製に取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である骨/軟骨機能チップの開発にあたり、iPS細胞を用いた軟骨様オルガノイドの作製プロトコルを確立・改善し、その分化促進機構を分子生物学的に解明できたことから、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、最終的には患者由来のiPS細胞から骨、軟骨等のオルガノイドを作製し、生体機能チップに資することを目標としているが、マウスiPS細胞の分化誘導プロトコルをそのままヒトiPS細胞に適用しても同様の結果が得られないという課題がある。本年度は、骨オルガノイドの質の向上を目的に、分化誘導法の改善と分化過程における分子機構の解析を試みる。また、オルガノイドのターゲットに、骨/軟骨同様の間葉組織である脂肪や、硬組織である歯胚を加えることで、間葉組織オルガノイドに至る分化機構を総合的に理解すると共に、これらの過程で得られる基盤技術を生体機能チップの開発に資することも考慮する。これまで確立してきたiPS細胞から中胚葉細胞塊までの分化誘導法を利用し、その後の誘導を脂肪細胞に向けることで、骨/軟骨/脂肪オルガノイド作製における中胚葉細胞以降の分化選択機構の一端の解明を試みる。一方で、iPS細胞から歯胚オルガノイドへの誘導を試みることにより、iPS細胞塊が生理的な石灰化過程を経て硬組織を形成する能力を探索することで歯学に特化した生体機能チップ研究を推進していく予定である。
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